中国に学べ!知っておくべき超大国のテクノロジー【チャイナテック】

こんにちは、unogram管理人のうのちゅ〜です。

今回は、伊藤忠総研主任研究員の趙 瑋琳氏による「チャイナテック―中国デジタル革命の衝撃」をレビューしていきたいと思います。

あなたは「日本が中国より進んでいる」なんて思っていないでしょうか?

もしそう思っているとしたら、あなたの時間は10年以上止まってしまっています。世界の中の日本・中国についての理解が追いついていないのです。

では、現在の中国のリアルとはどのようなものなのでしょうか?

趙氏が冒頭で述べるように、本書は「チャイナテックの実像を正しく理解」するための本です。「手放しの賞賛や感情的な批判を棄て、中国を客観的に見ること」を目的としており、中国の今についてリアリティをもって感じられる一冊となっています。

テクノロジーに携わる私うのちゅ〜もびっくりのチャイナテック。読書録としてその凄まじさの一端を記していきます。

それでは見ていきましょう!

 



知っておくべき中国テクノロジーの実際3選

日々報道される中国のテクノロジー。

「なんとなくスゴいんだろうな?」と思っている方も多いでしょうが、その実際について語れる日本人は少ないのではないでしょうか?

私の感覚としては、日本人は中国の実像を全く知りません(私も同様ですが…)。知らないどころか、10〜20年くらい前の中国のイメージのままアップデートされていない人がほとんどなのではないかと思っています。

そのような意味でも「チャイナテックの実像を正しく理解」させようとする本書の意義は大きいと思います。

さて、本書を読んで私が改めて感心した中国のテクノロジーについて、ポイントを3つピックアップしていきます。

BATH・TMDPがスゴい

BATHやTMDPと聞いてピンときた方は、今の中国に多少なりとも感心をもっている方なのではないかと思います。

これらは、近年の中国を引っ張ってきたテックジャイアントと次世代プラットフォーマーの総称です。各アルファベットが表す企業について確認しておきましょう。

テックジャイアントBATH
次世代プラットフォーマーTMDP

あなたはこれらの企業をどれだけ知っていたでしょうか?ファーウェイやティックトックは日本でもその名を聞く機会が多く、知名度が高いのではないかと思います。

その他の企業も、直接的には知らなくとも意外なところで日本人の生活に関わっていたりします。

例えば、コンビニ等で見かける「微信支付」(ウィーチャットペイ)や「支付宝」(アリペイ)は、それぞれテンセント、アリババが手掛けるスマートフォン決済サービスです。

Androidスマホ用キーボードアプリ「Simeji」を使ったことがある方も、それがバイドゥによって開発されたものだとは知らないのではないでしょうか?

このように、既に日本にもBATHやTMDPによるサービスが浸透しつつあるのです。

上記のサービスのみならず、各社はさらなる事業の多角化を進めています。その過程でのプラットフォーマー同士の争いや各社の注力ポイント、顕在化するリスクなどが本書では詳細に記述されており非常に興味深いです。

今日のGAFAのように、日本でも当たり前のようにこれらの企業のサービスを使い、なくてはならない存在になる日もそう遠くないのかもしれません。



AI・ブロックチェーンの社会実装がスゴい

AIやブロックチェーンという言葉は日本でもよく聞かれるようになって久しいですが、社会実装という点では中国に大きく遅れを取っています。

私が本書を読んで特に驚いたのが、AIの画像認識技術によるゴミの自動分別サービスです。中国ではゴミの分別という習慣がつい最近までなかったこともあり、AIが新しい習慣に戸惑う人々をサポートする役割を果たしているようです。

ブロックチェーンに関しても、金融や物流、保険サービスのような分野において、国を挙げて研究開発・普及が進められています。ブロックチェーンと聞くとビットコインのような暗号通貨を思い浮かべる方が多いかと思いますが、「情報を改竄できない」という特徴を生かして様々な分野への活用が進んでいるようです。

これらの技術は日本でももちろん研究開発や企業による産業化が進められています。しかしながら、社会的な規制や、新しい技術を受け入れるか否かという国民性の面などで、日中の間では大きな違いが見られると本書では述べられています。

私うのちゅ〜も、勝者総取りの色が強いテック業界で足踏みをしている日本に明るい未来が待っているのか?と強く懸念しています…

研究開発費・特許取得数がスゴい

中国におけるイノベーションの社会実装には、桁違いの研究開発費も大きく影響しているでしょう。

本書では研究開発費を重視するファーウェイの例が紹介されています。2010〜2019年の研究開発費の合計は、日本円にしてなんと約10兆円!それもそのはず、ファーウェイの18万人以上の社員の約45%が研究開発に従事しているそうです。単純計算で8万人以上のファーウェイ社員が研究開発をしているのですから、あのアメリカが恐れて規制をかけまくるのも納得かもしれません…

また、本書では中国企業が特許取得にも力を入れている点に言及しています。特に以下の「先端分野」に分類される10項目のうち、9項目の特許出願件数で2017年には中国が首位に立ちました。

中国が多数の特許を出願する10の先端分野
  • 人工知能(AI)
  • 再生医療
  • 自動運転技術
  • ブロックチェーン
  • サイバーセキュリティ
  • 仮想現実(VR)
  • ドローン
  • リチウムイオン電池
  • 伝導性高分子

参考:日経新聞「先端特許10分野、AIなど中国9分野で首位 日米を逆転」

残る1分野の「量子コンピュータ」はアメリカが1位となってるものの、この分野においても中国の研究開発・社会実装の姿勢には特筆すべきものがあります。

例えば、2020年12月にはGoogleに続く「量子超越」を光量子コンピュータを用いて達成したことを発表しています。また、中国の新興企業が開発した量子コンピュータ「本源悟源」を100社以上がクラウド経由で利用していることが報道されています。(参考:日経新聞「中国が「量子超越」達成 グーグルと異なる光方式」、「中国量子計算機、100社利用」

このように、中国はあらゆる先端分野において研究開発を加速させています。政府のの方針・援助姿勢もさることながら、上記のBATH・TMDPと呼ばれるプラットフォーマーが中国国内、ひいては世界を席巻すべく奮闘しているのです。



日本人が知らない中国の課題3選

ここまで、「チャイナテック」で取り上げられている内容を踏まえて私が注目する中国テクノロジーのポイントをまとめてきました。

一方で、そんな飛ぶ鳥を落としまくる中国にも懸念される点は存在します。

最先端のテクノロジーが次々に社会に取り入れられている中国に、いったいどんな問題が潜んでいるのでしょうか?日本に暮らす我々日本人があまり知らないポイントを3つ取り上げていきます。

「人工ボーナス」による経済成長は終わっている

実情についての理解はともかく、中国は経済成長を続けているイメージがあるという方は多いのではないでしょうか?

実は、その理解は半分合っていて、半分間違っているのです。

というのも、中国の高度成長期は既に終わっていたのです。「え、今経済成長真っ盛りじゃないの??」と驚いた方は中国理解度がまだまだ足りていないと言わざるを得ません。

本書によれば、「2019年のGDP成長率は6.1%で、(中略)1991年以降最低の水準」だったとのことです。意外ですよね?2007年には14.2%を記録しており、ここ数年は6~7%で推移している状況です。(参考:Google Public Data 中国

このように、中国が高度経済成長の最中であるというのは誤った理解であることがわかったかと思います。

一方で、中国の「経済成長」自体はもちろん止まったわけではありません。GDP成長率6.1%というのも、1991年以降最低の水準とはいえ、決して小さな数値ではありません。参考までに日本のGDP成長率は0.79%(2018年)です。(参考:Google Public Data 日本

今中国は次の経済成長の柱としてデジタルエコノミーの発展に力を入れているのです。中国が今後アメリカに変わる世界のリーダーとなるかどうかは、この改革の成否にかかっていると言っても良いかもしれません。

(日本の高度経済成長の次の柱は果たしていつ打ち立てられるのでしょうか…?)



データ活用とプライバシー

中国がテクノロジーの社会実装を次々と進めることができる大きな要因は、データ活用における規制が比較的緩いからです。深層学習のような技術においては、どれだけデータを集められるかが非常に重要ですから、国ごとの法制度の違いが技術の発達に影響するとしても不思議ではないでしょう。

しかしながら、そんな中国においてもプライバシー保護の動きが強まっています。中国の顔交換アプリが物議を醸し、日本でも話題になったのは記憶に新しいでしょう。

本書でもこのプライバシー問題について取り上げています。中国政府も世論を無視できず、ついに個人情報保護に関する法整備に取り組み始めており、今後は「プライバシー保護とデータ活用」の上手い舵取りがデジタル政策の成否に関わると見られています。

米中対立

アメリカによるファーウェイ製品排除の動きは記憶に新しいでしょう。また、2020年にコロナが猛威を奮うまでは米中貿易摩擦とも呼ばれる関税合戦について連日報道が続いていました。

このような、中国の猛烈な台頭を阻むアメリカという構図の「新冷戦」は中国にとっての大きな懸念事項です。

今後の覇権争いの行方はわかりませんが、米国一極集中から米中二極化が進んでいることは事実です。本書では、世界企業ランキング「フォーチュン500」に占める中国企業数が2019年に米国を抜いて1位に躍り出た例を紹介しています。1990年にランクインした中国企業は0社だったというのですから、その躍進には驚くばかりです。

また、国内市場の飽和が近づきつつある中国は、国外への積極投資も加速させています。「一帯一路」構想はまさにその代表的な例と言えるでしょう。

国内の発展のみならず、国外の地域間連携も積極的に推し進める中国に、アメリカが戦々恐々とするのも頷けるでしょう。対中政策が今後どのように中国の行方を左右するのか興味が尽きません。



まとめ:日本は中国から何を学ぶべきか

今回は、「チャイナテック―中国デジタル革命の衝撃」のレビューとして、日本人が知っておくべき中国テクノロジーの実際と課題について個人的に重要だと感じるポイントをピックアップしました。

まとめとして、日本が中国から学ぶべきだと感じる点を3つ挙げていきます。

日本が中国から学ぶべきこと

日本が中国から学ぶべきこと
  • 新しいテクノロジーを積極的に受け入れる
  • 競争を重視する
  • 研究開発を重視する

新しいテクノロジーを積極的に受け入れる

本書でも著者は次のように述べています。

日本社会がデジタルイノベーションを広く受容していくためには、よりポジティブな世論形成と、デジタルマインドの涵養が重要だと思われます。

第1章「『チャイナテック』を正しく理解する」より

これは全国民が重く受け止めるべき言葉だと感じます。高齢化が進み、デジタルネイティブ層の薄い日本においては、「若い人はテクノロジーに慣れてるけど(オトナ世代は)ね…」などと言っている場合ではないのです。このまま衰退の一途を辿りたくないのであれば、趙氏の提言をリアリティある施策をもって実行に移していくことが欠かせません。

競争を重視する

日本社会が競争を忘れてしまったのはいつからでしょうか?

本書を読んで中国企業内の競争意識の高さには非常に考えさせられました。アリババやテンセントといった中国を代表する2大企業には、それを支える競争システムが存在していたのです(詳しくは本書をご参照ください)。

競争力の基礎となる教育・学業においても同様です。中国やアメリカのような外国の大学とは異なり、日本の難関とされる大学は、入るのは難しくとも出るのは簡単です。これでは学生が必死で学ぶはずはありません。

東大がアジアで1位の大学だったのは、2015年までのことです。近年は7,8位あたりで落ち着いています。一方で、中国の清華大学は年々順位を上げ、2019、2020年は1位に輝いています。また、2020年の2位も中国の北京大学です。(参考:Asia University Rankings 2020

東大がスゴいと思っていた方は、意外に思ったのではないでしょうか?その思い込みは5年以上昔のものだったのです。

世界的に見れば、東大も決して上位ではありません(2020年は36位。参考:World University Rankings 2020)。これからの日本の競争力を左右する若者への教育により一層力を入れていくことが必要なのではないでしょうか

研究開発を重視する

最後は、特に企業の研究開発姿勢についてです。これに関しても中国に学ぶところが多いと感じました。

上述の特許件数、ファーウェイにおける研究開発職従事者の割合もその一例です。研究開発費に一兆円を投じるアリババの例も印象的でした。

社会や企業による未来への投資の姿勢は、特に中国から学ぶところが大きいのではないかと思います。

まずは知るところから

冒頭で紹介したように、本書は「チャイナテックの実像を正しく理解」するための本でした。まずはデジタルエコノミーを牽引する中国を正しく理解することが大切です。

中国やアメリカ、ひいては世界を知ることで本当の日本の姿が見えてきます。そして、技術的な遅れを認識し、より多くの人がテクノロジーを受け入れることが今の日本には必要とされているのではないでしょうか。