【民間企業編】研究職キャリアの選択肢

研究職のキャリアってどんな選択肢があるんだろう?

大学教授?企業に就職?

今回は研究職のキャリアの選択肢について、メリット・デメリットと共に見ていきたいと思います。私自身は理系の大学院で修士号を取得した後、企業の研究職として働いています。一方で、身の回りには博士課程に進学する人もいれば研究とは全く関係のない職業に就く人など、そのキャリアは多様です。そんな研究職のキャリアについて、自身の経験や知人の実例を交えて紹介していきます。

今回は民間企業編として、民間企業の研究職として研究を行うキャリアについて見ていきたいと思います。大学教員編は【大学教員編】研究職キャリアの選択肢で紹介しています。

それでは見ていきましょう!目指せ一流研究者!



民間企業の研究職

Company

概要

修士号を取得した学生の選択肢として、民間企業の研究職というのはかなりメジャーなものかと思います。私自身、修士課程修了後、民間企業に就職し、研究職として働いています。「民間企業の研究職」とひとくちに言っても、専攻や就職先企業によってその職務内容は広く異なります。「就職して企業で研究したい」と考えている方は、どの企業に就職することが自分の描くキャリアパスに合致しているか注意する必要があります。

給与

民間企業の新卒年収は「総合職」などと一般化され、他の技術職や営業職と区別されない場合が多いです。一方で、研究職の場合、修士卒や博士卒の場合がほとんどであるため、「修士卒年収」や「博士卒年収」に着目するとおおよその目安をつけることが可能です。

以下では時価総額ランキング上位企業から分野の異なる企業をピックアップし、修士修了者・博士修了者の新卒給与について見ていきたいと思います。

トヨタ

  • 月給23万円(修士修了)
  • 月給26.4万円(博士修了)

参考:トヨタ新卒採用情報(2021年度)

ソニー

  • 月給28万円(修士修了)
  • 「経験や能力を考慮の上、当社規定により決定」(博士修了)

参考:ソニー新卒採用情報(2021年度)ソニー経験者採用

日本電信電話(NTT研究所)

  • 月給23.787万円(修士修了)
  • 月給27.632万円(博士修了)

参考:NTT研究所新卒採用情報(2021年度)

中外製薬

  • 月給25.76万円(修士修了)
  • 月給29.16万円(博士修了)

参考:中外製薬新卒採用情報(2021年度)

信越化学工業

  • 月給24.95万円(修士修了)
  • 月給29.35万円(博士修了)

参考:信越化学工業新卒採用情報(2021年度)

同じ修士卒・博士卒でも企業によって給与にはバラツキが見られますね。また、修士卒と博士卒にも大きな開きがあります。ここに3年(以上)の博士課程の研究期間が反映されていると考えることができます。

また、年収については月給以外の報酬である賞与についても考慮する必要があります。賞与は同一企業においても企業の業績に応じて変動する場合があります。

参考:東洋経済オンライン「『ボーナス』200万円超えの上位100社ランキング」

さて、以下では民間企業の研究職のメリット・デメリットについて考えていきます。



メリット

  • 「社会人」の心理的安心

学生という立場から就職によって社会人となることに心理的な安心感を得る人も多いのではないでしょうか。また、家庭によっては大学院に進学することや、さらに博士課程に進むことへの理解を得るのが難しい場合もあるでしょう。「研究が好きで今後も続けたいが、学生を続けるのはちょっと。。。」という理由で企業に就職するという選択をする人は多いと思います。

  • 給与の支給

学生の中にはアルバイト等によって生計を立てている方もいるかと思いますが、保護者から学費や生活費を援助してもらっている場合、早く社会人として給与を得て自立したいと考える人も少なくないでしょう。そのような場合、修士号取得後に企業で給与を貰いながら研究を続けるという選択肢は有力なものとなります。

  • 世界が広がりやすい

【大学教員編】研究職キャリアの選択肢でも触れましたが、研究室で研究に打ち込んでいると、世界が狭くなりがちです。一方で、企業に属していると自分とバックグラウンドや年代、職種の異なる人との交流もあり、何かと世界が広がりやすいです。企業によって違いはありますが、例えば以下のような理由が挙げられます。

研究職以外の職種で入社した同期と合同の研修がある

部署・研究グループがバラバラの年代の社員によって構成される

他社からの転職や研究職以外の職種を経験した人と仕事をする機会がある

このように、研究室生活では得られない経験をすることができるのは民間企業の確かなメリットの1つではないかと思います。

  • 博士卒にメリットを感じない

これは修士過程修了後に民間企業に就職するか、博士課程に進学するかを選択するケースで論点となる点です。民間企業の修士卒・博士卒の初任給の例で見たように、確かに両者の給与には差があります。しかし、これが3年間の研究生活と博士号の対価に相応しいと考えるかは判断が分かれるところでしょう。というのも、海外では博士号取得者の待遇が良く、学士卒・修士卒とは明確な差が表れることが一般的だからです。
日本でもスマートフォン等で有名な中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が、博士号を持つ新卒者に年俸3100万円を提示したという例もあるようです。博士に進むべきか否かを考える際は、日本の特殊とも言える博士への待遇を考慮に入れる必要があるでしょう。。

デメリット

  • 修士号止まりの学位

これは人によって、あるいはその先の考えるキャリアによって重視するかどうかが分かれるところでしょう。日系企業で研究職を続ける場合や、他の職種への転職も視野に入れている場合は修士号のみで十分なケースが多いでしょう。一方で、大学教員や海外での研究職としてのキャリアを検討する場合は、博士号の取得がほぼ必須であり、修士号取得後に民間企業に就職してしまうという選択はデメリットになりえます。
また、実現可能かどうかは属する企業次第ですが、会社に籍を置きながら博士過程に進学するというケースもあります。

  • 研究に打ち込めない(場合がある)

企業の一員となれば、その会社の方針に従う必要があります。自分のやりたい研究ができない場合や、会議等によって時間が取られてしまうことがあり、大学の研究室時代と比べて思うように研究ができないと感じることがあるかもしれません。

  • 研究実績を公開しにくい

企業の製品に近い研究内容の場合、論文誌への投稿や学会発表が制限されることもあります。研究者として自身の実績を対外的に公表できない(ことがある)というのは後のキャリアにおいて痛手となる可能性があります。

  • 企業が倒産する可能性がある

企業に所属する以上、経営が立ち行かなくなれば倒産の可能性があります。また、経営が怪しくなった時点で、直近の利益に繋がりにくい研究職のコストカットがなされることも大いにありえます。

人それぞれのキャリアパス

Research group
修士過程を終えた後、進学するか就職するかの選択で迷っている人もいることでしょう。博士過程に進学し、そのままアカデミックの道を突き進む!というのも良いですが、一度就職して環境を変え、他の価値観との交流を経ることで、違った世界が見えてくるということもあるかと思います。ぜひ様々な選択肢を検討してみてください。

企業研究職についてもっと詳しく知りたい!という方は、企業研究者としてのキャリアについての書籍を読んでみるのもおすすめです。

ひとこと:ドイツの化学系メーカーで研究された経験もある著者。「企業研究者とはどんな仕事なのか?」「博士号のもつ価値とは?」「海外で研究職として働くって実際どう?」といった内容について、自身の経験に基づいて詳述されています。研究職を目指す学生の方には特におすすめです。

ひとこと:アメリカの大手製薬会社で研究職として働いた経歴をもつ著者。ご自身の経験について記載されていることはもちろんのこと、キャリアについて詳述されている点が特徴的です。企業研究職を目指す学生から研究職としてのキャリアに不安を感じている現役研究者にぜひ読んでほしい一冊。

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