こんにちは、管理人のウノケンです。
FDM3Dプリントにおける厄介な存在「シーム(継ぎ目)」。
表面でスジ状に目立つシームの処理に困っているという3Dプリンターユーザーは少なくないでしょう。
本記事では、Bambu StudioやOrcaSlicerといったスライスソフトにおける操作実例を挙げながら、
といった設定・機能を徹底解説していきます。
シームを上手にコントロールして、3Dプリントの品質を格上げしましょう。

FDM3Dプリンターのシーム(継ぎ目)とは何か?

シームとは、FDM3Dプリンターで各レイヤーを積層する際に生まれる“開始・終了位置の跡”のこと。
造形が進むたび、ノズルが押し出しを始める箇所が必ず発生し、それが連なることでスジ状になりやすいのがシームの正体です。
とくに滑らかな曲面や目立つ正面部分に集中すると、美観を損なってしまう厄介な要素です。
Bambu Studio・OrcaSlicerで設定できる4つのシームポジション

昨今の主流スライスソフトであるBambu StudioやOrcaSlicer(あるいはその派生ソフト)では、選択したシームポジションの性質に従って、スライス時に自動でシーム位置が設定されます。
シームポジションは、
の4種類から選択可能。順に見ていきましょう。
Aligned(アラインド・整列)

「Aligned(アラインド・整列)」はシームポジションのデフォルト設定。
シームが一直線に揃いやすい性質があります。
Nearest(ニアレスト・最寄り)

「Nearest(ニアレスト・最寄り)」は角張った構造が多い場合に継ぎ目が目立ちにくくなる設定。
ノズルの移動距離が短くなるように設定され、糸引きの影響を抑えやすいです。
シーム位置は比較的バラけやすい傾向。
Back(バック・背面)

「Back(バック・背面)」は単純にモデルの後ろ側にシームを集中させる設定。
背面のシームはあまり気にならず、正面をきれいに保ちたいケースで重宝します。
Random(ランダム)

「Random(ランダム)」は名前どおり、シームをあえて散らして目立たなくする方法。
広い平面や滑らかな曲面上では、逆に点々が目につく場合も。
後述するファジースキン設定時など、表面がザラザラしたようなモデルで有効です。
以上のように、用途やモデル形状によって最適なポジションは変わります。
まずは、シームが何なのかを把握し、4つのモードを理解することが重要。
そのうえで、どの設定がプリントするモデルに合致するか検討・選択すれば、プリント品質の改善につながるでしょう。
シームペインティングとは?シームを思い通りに配置しよう

シームポジションの自動選択だけでは、シームが理想的な位置に配置されない場合も少なくありません。
そんなときは、Bambu Studioなどのスライスソフトに搭載された「シームペインティング」を活用するという手があります。
ここでは、実際にシームペインティングを使った操作フローを紹介し、なるべく隠したい場所や目立ちにくい突起部にシームを誘導する方法を解説します。
シームペインティングの手順と注意点

シームペインティングは、スライスソフト上でブラシツールを使って
ここにシームを置いてほしい!(左クリック)
あるいは
ここには置かないでほしい。。。(右クリック)
という領域をマーキングし、ノズルのレイヤー開始位置を手動で誘導する機能です。
実際の作業では、上部のツールバーから「シームペインティング」機能を選択し、モデルの視点を調整しながらブラシで塗っていきます。
たとえば、モデル表面で盛り上がった装飾部分やパーツの境目など、シームが溶け込んで目立ちにくいエッジを選ぶと効果的。

一方、完全な平面や曲面中央にシームを集めてしまうと、却って目につきやすくなるので注意しましょう。
ブラシの強さや塗り幅の調整に加え、「この領域は絶対にシームを置かない」という指定も可能なスライサーが多いので、モデルごとに最適な塗り方を模索するのがコツ。

また、ペインティングした後は必ずプレビューで生成されたシームの位置を確認し、思わぬ箇所に回り込んでいないかをチェックするようにしましょう。
複雑な形状の場合、耳や突起の裏側など見落としがちな部分にシームが偏るケースもあります。
モデルの性質にもよりますが、最終的に問題なく配置できれば、シーム自体は存在していても視覚的にはほとんど気にならない作品に仕上げられるはず。
標準的な自動設定に比べれば毎回シームペインティングを実行するのは少々面倒ですが、丁寧に設定することで大幅に完成度がアップするでしょう。
シームペインティング機能が活用できるオススメ3Dプリンターの実機レビューもチェックしよう!

ファジースキンの設定と応用:ザラザラ加工でシームをカモフラージュ

シームポジションを変更したり、シームペインティングを実行しても、
どうしてもシームが目立ってしまう。。。
というケースもあるでしょう。
そんな場合には、思い切って「ファジースキン」というモードで表面を一様に「ザラザラ化」してしまうという手段もあります。
ファジースキンを使えば、細かな凹凸が全体に加わり、シーム(継ぎ目)だけでなく、レイヤーラインやリンギング(波打ち)といったプリント欠陥をグッと目立たなくできるのが大きなメリット。
ここではファジースキンの効果と主な設定パラメータを確認していきましょう。
ファジースキンの効果

ファジースキンは、プリント時のツールパスに微妙な揺らぎや波打ちを持たせ、表面をあえてザラザラに仕上げる機能です。
元々は見た目や触感にバリエーションを加えるための機能ですが、シーム消しの観点からも非常に有効。
ザラザラした凹凸パターンの中にシームを押し込む形になるため、ツルっとしたボディ表面に1本の線が走るような状態を回避しやすくなります。
ファジースキン機能を使うには?

Bambu StudioやOrcaSlicerの「ファジースキン」設定をオンにするだけで、これまで目立っていたシームがほとんど見えなくなるケースは珍しくありません。
そんなファジースキン(プロセス設定>Othersタブ>Special modeセクション内)のデフォルト設定は、「None」。
つまり、通常では「オフ」になっている機能です。
これをその他の項目(「Contour(輪郭)」「Contour and hole(輪郭と穴)」等)に変更することで、ファジースキン機能が有効になります。
独特の凹凸具合がどの程度になるかは、
といったパラメータで調整可能。
それぞれのパラメータ変更による効果も確認していきましょう。
ファジースキンの主要パラメータ①Point Distance(ポイント距離)

ファジースキンを有効にするだけでも効果を得られますが、パラメータを調整すれば、より理想的な表面を得ることが可能です。
主要パラメータの1つ目が、「Fuzzy skin point distance(ポイント距離)」。
表面のザラザラを形成する、いわば波形の周期に相当するものです。
この値を大きくすると凸凹の間隔が広がり、小さくすると間隔が縮まります。
ファジースキンの主要パラメータ②Thickness(厚さ)

もう1つが、「Fuzzy skin thickness(厚さ)」。
こちらは、波打ちの幅、つまりノズルがどれだけ内外にブレるかを表す数値です。
大きく設定すれば深い凹凸が生じ、シームや積層ラインを徹底的に隠すことができるでしょう。
その反面、造形強度や形状の正確さが損なわれる可能性が出てきます。
一方、thicknessを小さくすると、比較的ソフトな印象を与えることができます。
ただし、小さすぎるとザラザラの効果が薄く、シーム隠しにはあまり貢献しません(元のモデルに近くなります)。
上記のパラメータは、スライス結果を確認するだけでなく、実際にパラメータを変えて何度かプリントし、最適な設定を見極める試行が重要でしょう。
あるいは、後述するファジースキンパラメータの最適化用テストモデルをプリントしてみるのもオススメです。
ファジースキンの活用例と最適化用モデルの紹介

ファジースキンを使うと、本来は角張ったローポリモデルが温かみのある表現に変わるなど、これまでとはまったく違うデザイン手法が開かれます。
一方、ファジースキンで程よい質感を出すための調整に苦労するというのも現実。
そこで、ファジースキンを活用した作品の例と、最適化に活用できる3Dモデルを実際にプリントして紹介していきます。
ローポリ×ファジースキンで生まれるユニークな質感

ローポリモデルは、ポリゴン数を極端に減らした簡素な形状を魅力としています。
デザインやプリントのしやすさというメリットはあるものの、見た目に物足りなさを感じる場合も。
そんな場合のひと工夫としても、ファジースキンが大活躍。
多角形ベースの体の表面にランダムな凸凹が追加されることで、フィラメントの種類や色によっては、あたかもフェルトアートや厚手の布で製作した作品に見えることも。
ローポリの硬質なイメージとは真逆のテイストが加わることで、新鮮なデザインに昇華するわけです。
従来のツルンとした3Dプリントやローポリモデルの概念を覆す、新しいアート表現が楽しめるでしょう。
1度のプリントで主要パラメータを最適化できる3Dモデル

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