こんにちは、管理人のウノケンです。
今回は、高さ30cm以上のモデルをプリントできるおすすめの大型3Dプリンターについて解説していきます。
はじめに質問です。
Q. 一般的な家庭用3Dプリンターを使って、どれくらいの大きさの造形物が得られるでしょうか?
3Dプリンターを一度も使ったことがない人にはイメージがつきにくいですよね。
すでに使用している方でも、もう少し大きいモデルをプリントしたいけど、どれくらいの大きさのモデルを、どれくらいの価格の3Dプリンターでプリントできるのか、意外にわからない方も多いでしょう。
そこで、今回はスタンダードな造形サイズからは少し外れた、大型の家庭用3Dプリンターについて紹介していきます。詳細は後述しますが、「大型」として「造形可能高さ30cm以上」を基準としています。また、FDM方式と光造形方式のそれぞれで実現できる造形サイズは若干異なるため、個別に紹介していきます。
大型造形可能な3Dプリンターは価格が高くなりがちです。今回は家庭での使用を想定し、比較的手頃な値段で入手できる高コスパな3Dプリンターをピックアップしていきます。
それでは見ていきましょう!
はじめに:家庭用3Dプリンターで作れる大きさとは?本体価格は?
はじめに、スタンダードな家庭用3Dプリンターでつくれる造形サイズについて確認しておきましょう。
FDM方式と光造形方式のそれぞれについて解説していきます。
スタンダードな【FDM方式】3Dプリンターで作れる造形サイズ
FDM(熱溶解積層法)は、フィラメントを熱で溶かしながら積み上げていく方式です。下から積み上げていく方式のため、比較的高さのある構造も作りやすいです。
また、造形領域が密閉されていないタイプのほうが、一般的に造形サイズを大きくすることが可能です。反対に、密閉型は筐体内部に造形領域を収める必要があるため、造形可能サイズは小さい傾向にあります。
スタンダードなFDM方式3Dプリンターについて、例を挙げて見てみましょう。
【密閉なし】Creality「Ender-3 S1 Pro」
まずは、密閉されていないタイプの例として、Creality「Ender-3 S1 Pro」をピックアップします。こちらは人気のCreality Ender-3シリーズのハイエンドモデルです。
造形サイズ(幅×奥行き×高さ)[cm]:22×22×27
造形可能高さは27cmです。「Ender-3 S1 Pro」のみならず、人気の高いEnder-3シリーズのほとんどが造形可能高さ27cm以下となっています。
【密閉型】QIDI TECH「X-Smart 3」
密閉型のFDM方式3Dプリンターについても確認しておきましょう。2023年最新の低価格密閉型の例として、QIDI TECH「X-Smart 3」を取り上げます。
造形サイズ(幅×奥行き×高さ)[cm]:17.5×18×17
造形可能高さは17cmです。造形領域全体を箱で囲う必要があるため、密閉なしのモデルと比べると、造形サイズはやや小さい傾向にあります。
スタンダードな【光造形方式】3Dプリンターで作れる造形サイズ
続いて、光造形方式について見ていきましょう。
FDM方式と大きく異なる点の1つが、プラットフォームに吊り下げる形で造形されていくところです。家庭用3Dプリンターのスケールではそこまで大きな問題にはなりませんが、下から上に積み上げるFDM方式に比べると、高さを出しにくい傾向にあります。
また、レジンを使用することから、光造形方式3Dプリンターはほぼ例外なく密閉型です。この点は造形サイズを大きくしにくい要因の1つと言えるでしょう。
【密閉型】ELEGOO「Mars 3 Pro」
光造形方式についても、スタンダードな造形サイズを確認しておきましょう。こちらも人気の高いELEGOO Marsシリーズから、「Mars 3 Pro」をピックアップします。
造形サイズ(幅×奥行き×高さ)[cm]:14.343 x 8.96 x 17.5
造形高さは17.5cmです。このように、スタンダードな家庭用光造形3Dプリンターは、造形高さが20cm以下の場合も少なくありません。
FDM方式よりもひと回り小さく、光造形方式は高さ20cm前後の造形サイズが一般的と言ってよいでしょう。
【FDM】高コスパ大型家庭用3Dプリンターおすすめ3選
ここまで、FDM方式・光造形方式それぞれの家庭用3Dプリンターに関して、そのスタンダードな造形サイズについて確認してきました。
ここからは、スタンダードな造形サイズよりもひと回り大きい、高さ30cm以上の高コスパ3Dプリンターを紹介していきます。
FDM方式・光造形方式のそれぞれについて、おすすめ3選をピックアップしています。
【高さ30cm】Creality「K1 Max」
まずはじめに紹介するのは、Creality「K1 Max」です。
「K1 Max」は、密閉型であるにも関わらず、高さ30cmの造形が可能です。
密閉型による造形時の安定性・安全性に加え、充実した造形サイズを実現したおすすめの3Dプリンターです。
【高さ48cm】ELEGOO「Neptune 4 Max」
続いて紹介するのは、ELEGOO「Neptune 4 Max」です。
2023年9月にリリースされた、人気のELEGOO「Neptuneシリーズ」最新の大型モデル。造形サイズは圧巻の42 x 42 x 48cm。並の3Dプリンター本体が収まってしまいそうな巨大サイズとなっています。
「Neptune 4 Max」の魅力は造形サイズだけではありません。最大500mm/sというプリントスピードを実現しており、大型3Dモデルでも比較的短い時間でプリントすることが可能です。
「とにかく大きなモノを、できるだけ速く3Dプリントしたいんだ!」
という方にとっては、非常に有力な選択肢となるでしょう。
【高さ50cm】Anycubic「Kobra 2 Max」
FDM方式の最後に紹介するのは、Anycubic「Kobra 2 Max」です。
2023年8月末にリリースされたばかりのAnycubic「Kobra 2シリーズ」最新機種の1台で、その造形高さはなんと50cm。"Max"の名に恥じない圧倒的な造形サイズを誇ります。
「Neptune 4 Max」と同様に、ただ大きいだけではないのが「Kobra 2 Max」の特徴。最大500mm/sのプリントスピードも大きな魅力となっています。
「Neptune 4 Max」とはスペックが近く、選択するのが難しいかもしれません。後述する比較パートを参考にしてみましょう。
おまけ:スペックが類似する「Neptune 4 Max」と「Kobra 2 Max」の比較
「スペック・価格の近い『Neptune 4 Max』と『Kobra 2 Max』、どっちを選ぶべき?」
という方のために、選択のポイントとなりうる主な違いを記載しておきます。
スペック | Neptune 4 Max | Kobra 2 Max |
---|---|---|
造形サイズ | 420x420x480mm³ | 420x420x500mm³ |
推奨(標準)プリントスピード | 250mm/s | 300mm/s |
最大加速度 | 8000mm/s² | 10000mm/s² |
最大ノズル温度 | 300℃ | 260℃ |
最大ヒートベッド温度 | 85℃ | 90℃ |
LED搭載 | あり | なし |
ファイル転送 | USB、Wi-FI/LAN | USB、クラウド (未実装、2023年4Q以降) |
実勢価格(2023年9月時点) | 78,000円 | 79,999円 |
使用する材料によってはノズル最高温度が決め手になったり、その時々のタイミングで価格が決め手になったりすることもあります。自分の用途と照らし合わせて、よく吟味しましょう。次の項目のスペック比較表や、スペック比較ツールも活用してみてください。
FDM方式おすすめ3選のスペック一覧
モデル名 | K1 Max | Neptune 4 Max | Kobra 2 Max |
---|---|---|---|
本体イメージ | |||
メーカー | Creality | ELEGOO | Anycubic |
本体サイズ(LxWxH)[mm] | 435 x 462 x 526 | 658 x 632 x 740 | 735 x 640 x 740 |
造形サイズ(LxWxH)[mm] | 300 x 300 x 300 | 420 x 420 x 480 | 420 x 420 x 500 |
エクストルーダ | ダイレクト | ダイレクト | ダイレクト |
プリントスピード[mm/s] | 600 | 500 | 500 |
最大ノズル温度[℃] | 300 | 300 | 260 |
最大ヒートベッド温度[℃] | 120 | 85 | 90 |
組み立て | 組み立て済み | - | 半組み立て済 |
プラットフォーム | フレキシブル | PEIばね鋼 | PEIばね鋼 |
オートレベリング | ○ | ○ | ○ |
フィラメントセンサ | ○ | ○ | ○ |
停電時自動回復印刷 | ○ | ○ | ○ |
密閉 | ○ | × | × |
ディスプレイ | タッチ式 | タッチ式 | タッチ式 |
デュアルZ軸 | × | ○ | ○ |
データ入力 | USB Ethernet Wi-Fi | Wi-Fi LAN USB | USB Anycubic APP |
本体重量[kg] | 18 | 18.1 | 21 |
スライスソフト | Creality Print Cura Simplify3D PrusaSlicer | ELEGOO Cura | AnycubicSlicer PrusaSlicer Cura |
その他 | リモート制御機能 AIカメラ搭載 AI LiDAR搭載 空気清浄機搭載 Lighting kit搭載 | ディスプレイ取り外し可能 LED搭載 | 内部ストレージ(8GB) アプリコントロール対応 ダブルモーターデュアルZ軸 |
出典 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
【光造形】高コスパ大型家庭用3Dプリンターおすすめ3選
【高さ30cm】Anycubic「Photon M3 Max」
光造形方式の1つ目は、Anycubic「Photon M3 Max」です。
その特徴は、
です。
数十万円以上が当たり前の大型光造形3Dプリンターの中で、「Photon M3 Max」の実勢価格は20万円を下回ります。
「できるだけ低コストで大型光造形3Dプリンターを導入したい!」
という方にとっては非常にありがたい存在でしょう。
【高さ40cm】Phrozen「Sonic Mega 8K」
続いて紹介するのは、Phrozen「Sonic Mega 8K」です。
造形サイズは330×185×400mm³。高さ40cmという光造形としては類稀な圧倒的スケールを実現しています。
【高さ40cm】Peopoly「Phenom XXL V2」
最後に紹介するのは、Peopoly「Phenom XXL V2」です。
造形高さはなんと55cm。造形サイズの大きい「Phenomシリーズ」においても群を抜いて巨大な造形サイズ(527x296x550mm³)を誇ります。
代理店のSK本舗では受注入荷による取り扱いとなっているようです。入荷まで数週間かかるため、導入を検討している方は気をつけましょう。
光造形方式おすすめ3選のスペック一覧
モデル名 | Photon M3 Max | Sonic Mega 8K | Phenom XXL V2 |
---|---|---|---|
本体イメージ | |||
メーカー | Anycubic | Phrozen | Peopoly |
本体サイズ(LxWxH)[mm] | 400 x 408 x 596 | 470 x 400 x 680 | - |
造形サイズ(LxWxH)[mm] | 298 x 164 x 300 | 330 x 185 x 400 | 527 x 296 x 550 |
Z軸精度[mm] | - | - | - |
積層ピッチ[mm] | - | 0.01-0.3 | - |
ピクセルサイズ[mm] | - | 0.043 | 0.137 |
ピクセル数(XY) | 6480 x 3600 | - | - |
プリントスピード[mm/h] | Max 60 | Max 70 | - |
データ入力 | USB | USB/Ethernet | - |
本体重量[kg] | 26 | 35 | - |
スライスソフト | Photon Workshop | CHITUBOX | Lychee Slicer Tango Voxeldance Vlare Slicer |
その他 | 自動レジン供給機能 | モニタ用カメラ搭載 予備スクリーン 予備FEPフィルムx2 | |
出典 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
まとめ:大型3Dプリンターは価格もさまざま。しっかり比較しよう
今回は、高さ30cm以上のモデルをプリントできるおすすめの大型3Dプリンターについて、FDM方式と光造形方式のそれぞれに分けて解説してきました。
FDM方式のELEGOO「Neptune 4 Max」、Anycubic「Kobra 2 Max」など、10万円以下で50cmの高さを造形できるプリンターも登場しましたね。
今回、多くの大型3Dプリンターを見てきてわかるように、できるだけ価格を抑えて高さのあるモデルを造形したい場合、優先度が高いのはFDM方式でしょう。
一方で、フィギュア用途のように滑らかな表面はゆずれない!という場合には光造形方式も選択肢に入ってきます。
自身の目的に照らし合わせて、ひと回り大きい3Dプリンターの導入を検討してみてください。もちろん、本体サイズも大きいので置き場所はしっかり確保してくださいね!