こんにちは、管理人のウノケンです。
今回は、初心者が理解しておきたい3Dプリンターに関する用語の解説をしていきます。
3Dプリンターの購入を検討したり、メンテナンスしたりするうえで必須の知識なので、ぜひ確認しておきましょう。
家庭用3Dプリンターには、光造形とFDM(熱溶解積層法)という代表的な2つの方式があります。部品の違いなどのために、光造形とFDMのそれぞれで知っておくべき用語は少し異なります。初心者の方にとっては、「この用語はFDMに関係あるの?光造形の話?」と感じることも少なくないでしょう。
どちらの方式に関係のある用語なのか、整理しておくことは重要です。今回は、FDM方式と光造形方式のそれぞれで押さえておきたい用語について分類し、整理して解説していきます。
それでは見ていきましょう!
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FDM方式とは【3Dプリンター用語集】
FDM(熱溶解積層法、FFF)
冒頭でも紹介したように、FDMは家庭用3Dプリンターにおける代表的な2つの方式のうちの1つです。「趣味で3Dプリンターをはじめたい!」と思った方は、このFDMか後述する光造形のどちらかを選ぶことになるでしょう。
「FDM(Fused Deposition Modeling)」は、日本語で「熱溶解積層法」と訳されます。
「FDM」という名称はもともと、3Dプリンターの大手企業であるストラタシス社の商標です。そのこともあり、「FFF(Fused Filament Fabrication)」という一般名称で呼ばれることもあります。FDMとFFFは同じ方式を指しているということは覚えておきましょう。
FDMは、熱で樹脂(フィラメント)を溶解して、積層する方式です。「熱溶解積層」の名前のとおりですね。もっと詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
フィラメント
フィラメントは、FDM方式で使用される材料の樹脂のことです。
細長い繊維状に加工されており、上の図のようにスプールに巻かれています。
フィラメントは固体の状態でエクストルーダー(押出機)に供給され、融点まで加熱されます。溶けたフィラメントは小さなノズルから押し出され、ヒートベッド上に積層されていきます。
ヒートベッド
ヒートベッドとは、3Dモデルが造形されるステージのことです。プラットフォームとも呼ばれます。
ヒートベッドは加熱されており、押し出されたフィラメントが冷却されて反りが発生するのを防ぐ役割があります。
使用するフィラメントの種類によって、ヒートベッドの重要性は異なります。PLAなどを使用する場合、ヒートベッドの存在はそれほど重要ではありませんが、ABSやPETGを扱う場合には不可欠な存在です。
エクストルーダー(押出機)
エクストルーダー(押出機)は、フィラメントを溶かして押し出す部分です。フィラメントを保持し、モーターを使って加熱されたノズルに供給します。
エクストルーダーの配置は、ボーデン式とダイレクトドライブ式の2つが一般的です。
一般に、速度を重視する場合はボーデン式、TPUのような柔らかい材料・研磨性のある材料を使用したい場合はダイレクトドライブ式が適しています。
これら2つの配置の概要と、それぞれの長所・短所について見ていきましょう。
ボーデン式
ボーデン式は、エクストルーダーのモーターがノズルから離れているタイプです。
エクストルーダーはプリンターのフレーム部分に取り付けられており、ボーデンチューブと呼ばれる長いPTFE製のチューブを通してフィラメントがノズルに供給されます。
ボーデン式の長所
- 可動部が軽量で動きが速く、静かで精度も高い
- 可動部が小さいため、造形サイズが比較的大きい場合も
ボーデン式の短所
- 長いチューブを通すことによる、強力なモーターの必要性
- モーターとノズル間に遅延が生じ、糸引きにつながる場合も
- フィラメントによっては、ボーデンチューブに付着したり、摩耗したりする
ダイレクトドライブ式
一方のダイレクトドライブ式では、エクストルーダーのモーターがノズルに直接取り付けられています。
ダイレクトドライブ式の長所
- モーターとノズルの距離が近く、信頼性が高い
- フィラメントの引き込みが良い
- ノズルとの距離が近いので、モーターのパワーが低くて良い
- 柔らかく研磨性のあるフィラメントとの相性がよく、材料選択の幅が比較的広い
ダイレクトドライブ式の短所
- 可動部の重量増加による速度低下、ぐらつきの懸念
- モーターとノズルが一体化していることによるメンテナンスの煩雑さ
デュアルエクストルージョン
デュアルエクストルージョンは、基本的に2つのエクストルーダーが搭載されている方式です。
同時に2つの色や、異なる材料を使用してプリントすることが可能です。
デュアルエクストルージョンタイプの3Dプリンターには、装飾性が高まったり、水溶性のフィラメントを併用することによる複雑形状のプリントが可能であるという、通常の単色3Dプリンターにはない魅力があります。
デュアルエクストルージョンタイプの3Dプリンターはまだまだ少なく、価格も高い印象です。
気になる方はI-Fast(QIDI TECH)やNJB-300W(ニンジャボット)、Cetus2(Cetus3D)などをチェックしておきましょう。
光造形方式とは【3Dプリンター用語集】
光造形
「光造形」も家庭用3Dプリンターにおける代表的な2つの方式のうちの1つです。
その名の通り「光」を使った造形方式で、液体の樹脂を1層1層固めながら3次元形状を形作っていきます。
ひとくちに「光造形」といっても、用いる光源やシステムの違いに応じて、いくつかの種類があります。
SLAタイプ
SLAタイプは、レーザとミラー(鏡)を用いて3Dモデルの1点1点を硬化させていく方式です。
レーザを用いるため価格が高く、家庭用3Dプリンターにはあまり用いられません。
LCDタイプ
テレビやスマホの画面にも用いられる液晶パネル(Liquid Crystal Display)を使用した方式です。比較的安く、家庭用3Dプリンターにも多くのモデルが存在します。
低価格帯の家庭用光造形3Dプリンターは基本的にこのLCDタイプです。MSLAと呼ばれる方式も基本的に同じものを指します(後述)。
DLPタイプ
DLPと呼ばれる非常に小さなミラーを用いる方式です。DLPと聞いてもピンと来ないかもしれませんが、会議などで用いられるプロジェクターによく使用されています。
家庭用3Dプリンターではほとんど見られないタイプですが、Anycubic社のPhoton UltraはDLPタイプです。
レジン
材料となる液体の樹脂は「レジン」と呼ばれます。紫外線(UV)を当てると硬化する性質があります。
LCDタイプの3Dプリンターの場合、各画素で紫外線を通すか通さないかによって、その画素に対応する位置のレジンを硬化させるか硬化させないかを制御しています。これを何層も繰り返していくことで3D形状がプリントされていきます。
硬化を終えたレジンには後処理が必要です。このとき、一般のレジンではIPAのような薬品を使いますが、水洗いできるタイプのレジンも存在します。
MSLA
「MSLA」はMask stereolithographyの略称です。LCDスクリーンを介して硬化させない部分の樹脂をマスクすることから、このように呼ばれます。
光造形方式の3Dプリンターの名称に、「MSLA 3Dプリンター」のような記載が入っていることがあります。これは、LCDタイプの光造形方式3Dプリンターですよ、という意味になります。
FDM方式・光造形方式共通3Dプリンター用語集
スライサー(スライスソフト)
スライサー(スライスソフトとも呼ばれます)は、3DCADなどを使って設計した3Dモデルを、フラットなレイヤーに分割するために使用されるソフトウェアです。スライサーによって分割された1層1層を積層していくことで3Dプリントが実現されます。
スライサーの出力は、プリンターのパスや速度、温度を制御するGコード(後述)からなります。
無償のものから有料ソフトまで様々なスライサーが提供されています。有名どころでは、Slic3RやCHITUBOX、Curaが挙げられます。使用する3Dプリンターと相性の良いソフトや、いくつか触ってみて自身の使いやすいソフトを選ぶと良いでしょう。
STL
STLは、3DCADや3DCGソフトを用いて作成した3Dモデルの最も一般的なファイル形式です。
このSTLファイルをスライサーを使って多数の層に分割します。
Gコード
Gコードは、3Dプリンターのようなマシンに指示をするために用いられる言語です。「G10」のように、Gと数字からなるコマンドで記述されます。
コマンドのライブラリは多様で、速度や回転といった動作に関わるものから、スイッチやセンサのような項目も含まれます。自身でコードを直接編集することもできますが、基本的にはスライスソフトが生成してくれるので、文法を学ぶ必要はありません。
参考:All3DP "The Best 3D Printers of 2022 – Buyer’s Guide", "Direct Drive vs Bowden Extruder: The Differences"