どのフィラメントを使えばいいの?種類と選び方完全ガイド!【FDM3Dプリンター】

こんにちは、管理人のウノケンです。

今回は、FDM3Dプリンターで使用するフィラメントの種類と選び方について解説していきます。

FDM3Dプリンターの材料となる「フィラメント」。どんな色・材質のモノが仕上がるかは材料のフィラメント次第です。そんなフィラメントですが、

  • Amazonで安く購入できるフィラメントしか使ったことがない
  • いつもなんとなく同じフィラメントを選んでしまっている

という人も多いのではないでしょうか?

世の中には多くのフィラメントが出回っています。有名どころを数え上げるだけでも、その数ざっと50種類以上。正直、どのフィラメントを選べば良いのかわからない!という方がほとんどでしょう。

そこで今回は、

  • FDM3Dプリンター初心者で、フィラメントの選び方を知りたい
  • いつも使っているフィラメント以外のブランド・種類にも興味がある

という方の参考になるように、フィラメントの種類と選び方について徹底解説していきます。

作りたいモノに合わせて適切なフィラメントを使いこなすことができれば、あなたの3Dプリンターモノづくりの幅はグンと広がること間違いなしです。最後までぜひご覧ください。

それでは見ていきましょう!



  1. 3Dプリンター用フィラメントとは?
  2. こんなにたくさん!3Dプリンター用フィラメントの種類一覧
    1. PLA(ポリ乳酸、Polylactic acid)
    2. ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)
    3. PETG(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、Glycol modified polyethylene terephthalate)
    4. TPU(熱可塑性ポリウレタン、Thermoplastic Polyurethane)
    5. PA(ポリアミド、Polyamide)
    6. PC(ポリカーボネート、Polycarbonate)
    7. ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリレート、Acrylonitrile-Styrene-Acrylate)
    8. PVA(ポリビニルアルコール、Polyvinyl alcohol)
  3. どのブランドのフィラメントを選べば良い?
    1. 装置メーカーに合わせる必要はない
    2. フィラメントの直径と推奨造形温度に注意しよう
    3. レビューを参考にしつつ、少量買って試してみる
  4. フィラメント選びの参考になるスペック(推奨パラメータと物性値)
    1. エクストルーダ温度(Extruder temperature、Printing temperature)
    2. ヒートベッド温度(Bed temperature、Platform temperature)
    3. プリントスピード(Printing speed)
    4. 曲げ強度(Tensile strength)
    5. シャルピー衝撃強さ(Charpy impact strength)
  5. 初心者におすすめのフィラメントの種類は?
    1. まずはPLAを使ってみよう
    2. 3Dプリンターに慣れたらPETGやABSなどに手を出してみよう
    3. さまざまなフィラメントを試して実用品のプリントにも挑戦
  6. まとめ 〜適切なフィラメントを選んでプリントの幅を広げよう〜
    1. フィラメント選びに必要な色や詳細なスペック(物性値)を調べるには…
    2. 各ブランドが展開するフィラメントについて詳しく知りたい!という方は…

3Dプリンター用フィラメントとは?

3Dプリンター用フィラメントの例(出典:Polymaker, Anycubic)

そもそも3Dプリンター用のフィラメントとは何か?ということに触れておきましょう。

フィラメントは、FDM方式の3Dプリンターで使用される材料の樹脂のことです。細長い繊維状に加工されており、上の図のようにスプールに巻かれています。

フィラメントは固体の状態でエクストルーダー(押出機)に供給され、融点まで加熱されます。溶けたフィラメントは小さなノズルから押し出され、ヒートベッド(プラットフォーム)上に積層されていきます。ノズルが縦横無尽に動き回ることで、3次元の立体構造物が形作られていきます。

フィラメントの種類によって、色や材質はさまざま。エクストルーダーやヒートベッドに設定すべき温度や、ノズルを動かす適切な速度も異なります。自身の作りたいものや所有している(あるいは購入予定の)3Dプリンターのスペックに応じて適切なフィラメントを選ぶことが重要です。

こんなにたくさん!3Dプリンター用フィラメントの種類一覧

3Dプリンター用フィラメントにはいろいろな種類があります。色や硬さが異なるだけでなく、バイカラーやレインボーといった装飾性の高いものや、サポート材専用フィラメントのような変わり種も存在します。

一例として、多数のフィラメントを扱うeSUNのフィラメントの一部を見てみましょう。

フィラメント名PLA PluseSilk-PLA MagiceSilk-PLA RainbowPETGABSWoodeTPU-95AePA-CFPVA
イメージproduct imageproduct imageproduct imageproduct imageproduct imageproduct imageproduct imageproduct imageproduct image
メーカーeSUNeSUNeSUNeSUNeSUNeSUNeSUNeSUNeSUN
Orange
Fire engine red
Grey
Brown
Light brown
Red
Olive green
Green
Cold white
Dark blue
Pine green
Purple
Pink
Blue
Magenta
Light green
Light blue
White
Beige
Gold
Silver
Black
 Red-Blue
 Green-Blue
 Gold-Silver
 RainbowSolid Black
Solid White
Grey
Solid Silver
Orange
Solid Orange
Fire engine red
Blue
Green
Black
White
Grey
Silver
Natural
NaturalBlack
White
Grey
Natural
Transparent Orange
Transparent Yellow
Transparent Green
Transparent Blue
NaturalNatural
ヒートベッド温度[℃]45-6045-6045-6075-9095-11045-6045-6045-6045-60
エクストルーダ温度[℃]210-230190-230190-230230-250230-270210-230220-250260-300180-230
推奨プリントスピード[mm/s]40-10040-10040-10040-10040-10040-10020-5040-10020-50
出典公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト
画像、スペックは各社公式ページより引用。記載のない項目は”-“で示している。
一般購入しやすいフィラメントとして、Amazonで購入できる種類・色を中心に記載。時期によって購入できる種類・色が異なる場合もあるため注意。

1つのブランドに限っても、非常に多くのフィラメントが取りそろえられていることがわかりますね。

フィラメント名だけ見てもどのような性質を持つフィラメントなのかわかりにくいかと思います。eSUNの例に限らず、ここからは主なフィラメントの種類について簡単に解説していきます。

初心者の方で、まずはおすすめのフィラメントの種類を知りたい方は「初心者におすすめのフィラメントの種類は?」の項目にジャンプしてください。

自分で好きなフィラメントを比較したい!詳細スペックを知りたい!という方は…

フィラメント選びに必要な色や詳細スペック(物性値)を調べるには、無料のフィラメント比較ツールが便利です。各ブランドの公式ページを徘徊する手間を省くべく作成しましたので、ぜひ一度使ってみてくださいね!

Age of 3DPが提供するフィラメント比較ツールのイメージ



PLA(ポリ乳酸、Polylactic acid)

「PLA(ポリ乳酸、Polylactic acid)」は、もっとも広く使用されているフィラメントの1つです。生分解性プラスチックの1種で、トウモロコシなどの植物を原料として生産されることから、環境にやさしいフィラメントとされています。

PLAのメリットは以下の通りです。

  • 低価格
  • ABSよりも変形しにくく、プリント品質が高い
  • 生分解性プラスチックのため、環境にやさしい

扱いやすく、コスパも高いことから、初心者にも人気のスタンダードなフィラメントです。

一方、熱や衝撃への耐性はいまひとつです。機械的特性に際立った特徴を求めるのであれば、後述する他のフィラメントを検討しましょう。

販売しているブランドは?

基本的にどのブランドも販売しています!

人気が高くユーザも多いPLAには、装飾性の高いフィラメントも多数存在します。光造形3Dプリンターの材料であるレジンよりもその数は豊富です。フィギュアやオブジェを制作する際にはいろいろなブランドのPLAを眺めてみると新たな発見があることでしょう。

装飾性が高いPLAをいくつか紹介していきます。

Wood

「Wood」は、その名の通り木のような見た目のPLAフィラメントです。プリントしやすいというPLAの特徴を維持しながら、独特のやさしい質感を表現することができます。

Rainbow

「Rainbow」は、光沢のある虹色が特徴的なPLAフィラメントです。

異なる色のフィラメントがなめらかにつながっているイメージで、フィラメントを使い続けていると色が順々に変化していきます。ある程度の大きさのあるものをプリントすると、きれいな虹色の造形物を得ることができます。

ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)

「ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)」は汎用性の高いプラスチック材料で、私たちの日常で使われるあらゆるモノの原料となっています。

3DプリンターのフィラメントとしてもPLAと並んで広く使用されており、低コストながら機械的特性に優れています。頑丈さや耐熱性が要求されるような実用品のプリントに適したフィラメントと言えるでしょう。

難点は、PLAに比べて反りが発生しやすいところです。場合によってはエンクロージャ(3Dプリンターの周囲を覆うもの)を使って保温する必要があります。

販売しているブランドは?

SUNLUやeSUN、Polymaker、Overture等多くのブランドで販売されています!

フィラメント名ABSABSPolyLite ABSABS
イメージproduct imageproduct imageproduct imageproduct image
メーカーSUNLUeSUNPolymakerOverture
Black
Red
Green
Black
White
Grey
Silver
Natural
Black
White
Grey
Red
Blue
Green
Yellow
Orange
Teal
Purple
Black
White
Yellow
Light Blue
Gray
Slate Grey
Dark Green
Orange
Green
Blue
Gold
Dark Red
ヒートベッド温度[℃]80-12095-11090-100-
エクストルーダ温度[℃]230-270230-270245-265-
推奨プリントスピード[mm/s]50-10040-10030-50-
出典公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト
画像、スペックは各社公式ページより引用。記載のない項目は”-“で示している。
一般購入しやすいフィラメントとして、Amazonで購入できる種類・色を中心に記載。時期によって購入できる種類・色が異なる場合もあるため注意。

PETG(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、Glycol modified polyethylene terephthalate)

「PETG(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、Glycol modified polyethylene terephthalate)」もユーザの多いフィラメントの1つです。

「PETG」の「PET」はペットボトルでおなじみのポリエチレンテレフタレートのことです。「G」がつく「PETG」はその派生で、より3Dプリントに適した特性をもっています。

ABSと同様に機械的特性に優れ、耐熱性も高いです。そのうえ収縮や反りも少なく、PLAとABSの両方の利点をもつと表現しているブランドもあるほどです(出典:Creality)。

難点は糸引きが生じやすい点です。フィラメントドライヤーを使うなどして、しっかり湿度対策をする必要があります。

販売しているブランドは?

SUNLUやeSUN、Polymaker、Overture等多くのブランドで販売されています!

フィラメント名PETGPETGPolyLite PETGPETG
イメージproduct imageproduct imageproduct imageproduct image
メーカーSUNLUeSUNPolymakerOverture
White
Black
Red
Green
Blue
□Clear
Solid Black
Solid White
Grey
Solid Silver
Orange
Solid Orange
Fire engine red
Blue
Green
Black
White
Grey
Red
Blue
Green
Yellow
Orange
Teal
Purple
□Transparent
Transparent Red
Transparent Green
Transparent Blue
□Transparent
ヒートベッド温度[℃]75-8575-9070-80-
エクストルーダ温度[℃]220-250230-250230-240-
推奨プリントスピード[mm/s]50-10040-10030-50-
出典公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト
画像、スペックは各社公式ページより引用。記載のない項目は”-“で示している。
一般購入しやすいフィラメントとして、Amazonで購入できる種類・色を中心に記載。時期によって購入できる種類・色が異なる場合もあるため注意。



TPU(熱可塑性ポリウレタン、Thermoplastic Polyurethane)

「TPU(熱可塑性ポリウレタン、Thermoplastic Polyurethane)」は、その弾力性に特徴のある素材です。スマホケースに使用されることが多く、なじみのある方もいることでしょう。

「PLA」「ABS」「PETG」のような、比較的硬い材料とは異なるゴムのような柔らかさが特徴で、耐摩耗性や耐衝撃性、柔軟性に優れた材料です。素材の性質が大きく異なるため、TPUを使いこなせるようになると3Dプリントの幅が大きく広がります。

難点は造形の難しさです。素材自体が柔らかいために、造形時に歪みが生じたり、ノズル詰まりが発生したりすることもしばしばです。プリントスピードの調整をするなどして適切なパラメータを見つける必要がある、中級者向けのフィラメントと言えるでしょう。

販売しているブランドは?

SUNLUやeSUN、Polymaker、Overture等多くのブランドで販売されています!

フィラメント名TPUeTPU-95APolyFlex TPU90