こんにちは、管理人のウノケンです。
2025年8月26日、Bambu Lab「H2S」の発表が3Dプリンター業界に衝撃を与えたそのわずか1時間後……。
さらなる大きなサプライズとして、革新的なホットエンド交換システム「Vortek(ボルテック)」を搭載した次世代機、
Bambu Lab「H2C」の年内リリース
が予告されました。
そして予告通り、2025年11月18日にはH2Cがグローバルリリース。
アメリカ・ヨーロッパなどでは予約注文が開始されました。
この記事では、昨今のマルチカラープリントにおける最大の課題を解決する可能性を秘めた「H2C」と「Vortekシステム」について、その詳細を深く掘り下げて解説していきます。

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3Dプリンター界に衝撃を与えた「H2C」と「Vortekシステム」

3Dプリンターの世界に訪れた新しい革新の風。
その中心にあるのが、「Vortekシステム」を搭載した「H2C」です。
従来の常識を超えるその性能や仕組みについて、まずは見ていきましょう。
3Dプリントの常識を覆す「Vortekシステム」とは?

Bambu Lab「H2C」の核となるのは、3年もの歳月をかけて開発された、革新的なホットエンド交換システム「Vortek」です。
「Vortekシステム」が解決を目指す最大の課題は、AMSをはじめとする従来のシングルノズル・マルチカラーシステムで必ず発生していた、フィラメント切り替えに伴う膨大な無駄、通称「poop」の発生です。
「Vortekシステム」はAMSでも、デュアルノズルでも、ツールチェンジャーでもない、全く新しいアプローチで課題解決に取り組んでおり、フィラメントの無駄を劇的に削減することが期待されています。

このシステムでは、ツールヘッド全体ではなくホットエンドのみを交換します。
ビルドプレートの向かって右側には、1〜6の番号が振られた見慣れないレーンがあり、ここにホットエンドが取り付けられています。

右側スロットのホットエンドだけを付け替えることで、フィラメント交換を実現するという画期的な仕組みです。
この仕組みを実現するため、Bambu Labは高度な技術革新を導入しました。
特に、
と、ホットエンド上に設計されたマイクロ回路による、
によって、加熱と熱測定の課題を克服しています。
誘導加熱技術によって、ノズルはわずか8秒で印刷温度に到達することが可能となり、材料交換ごとの予熱時間を大幅に短縮します。
さらにワイヤレス通信を採用したことで、酸化しやすい金属ピンが排除され信頼性が向上しています。
そして、「Vortekシステム」は交換部分をホットエンドに限定することで、造形ボリュームを大きく犠牲にすることなく、最大6つの交換可能なホットエンドを収容することを可能にしました。
これは複数のAMSユニットと組み合わせることで、最大24色/材料を1回のプリントで利用できることを意味します。
つまり「H2C」によって、
ことが可能となったのです。

たとえば、構造的な剛性を持つPA6-GF、難燃性のPC FR、衝撃吸収のためのTPUなど、複数の特性を持つ材料を1つのパーツに組み込むこと(マルチマテリアルプリント)も容易となるでしょう。
「H2C」自体にも注目!シリーズ共通の性能と安全機能を搭載

注目すべき点は、「Vortekシステム」だけではありません。
「H2C」は、今年登場した他の「H2シリーズ」との共通点を多く持ち、高性能な仕様を備えています。
まず「H2C」は、
を搭載。
これにより反りを最小限に抑え、高機能なエンジニアリングフィラメントの利用を最大限に引き出します。
押出機にはPMSMサーボ押出機が採用されており、ステッピングモーターよりも70%多い、最大10kgの押出力を提供。
高流量での押出安定性が劇的に向上しています。
また、ビジョンエンコーダーにより50μm未満の超微細な動作精度を実現し、自動で機械的なドリフトを補償します。
さらに、「H2C」には59個のセンサーとAIを活用したクアッドカメラシステムを搭載。
これらのインテリジェントな監視システムが押出パターンを継続的に追跡し、材料の蓄積や目詰まりなどの印刷異常をリアルタイムで検出します。
もちろん安全性も担保されており、「H2C」は3段階のエアフィルターシステム、
を備えることで、エンジニアリングフィラメントから発生する有害な粒子や臭気を最小限に抑えます。
筐体はUL94 V-0グレードの難燃性素材で構成されているため、高い火災安全保護を提供します。
また、「H2C」には「H2D」と同様に、10Wと40Wの両方のレーザーバージョンが用意されています。

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「H2S」実機レビューはこちら!

「H2C」導入時に知っておきたい意外な仕様4選

ここまで見てきて、「H2C」がいかに革新的なマシンなのかが分かったことでしょう。
「H2シリーズ」との共通点も多く、使い勝手の良い高機能マシンとなること間違いありません。
ですが、そんな「H2C」には従来の「H2シリーズ」とは異なる意外な仕様もあります。
それが、主に以下の4つ。
導入前に、把握しておきましょう!
「H2C」は左右で異なるホットエンドを使用

まずは、「H2C」のホットエンドについて。
「H2C」は左右で異なるホットエンドを使用しています。
左側は見慣れた「H2シリーズ」・「P2S」共通のホットエンドですが、右側はVortek用の誘導加熱に対応した特殊なホットエンドとなっています。
「H2D」「H2S」とはビルドプレートの互換性なし

次に、ビルドプレートの互換性について。
「Vortekシステム」がビルドプレートの横にスペースを必要とするため、「H2C」のプリントベッドは「H2D」「H2S」よりもわずかに小さくなっており、ビルドプレートの互換性がありません。
その結果、造形サイズも「H2C」は330 x 320 x 325 mm³と、「H2シリーズ」の3機種の中で最小となっています。
現状異なるノズル径を同時に使用したプリントは不可

続いて、「H2C」の現在の仕様として、異なるノズル径を同時に使用してプリントすることはサポートされていません。
例えば、Vortekスロット内に0.2mm、0.4mm、0.6mmの異なるノズル径のホットエンドをセットしても、プリント中にこれらを自動で切り替えて使用することはできません。
Bambu Wikiによれば、Vortek内に異なるノズル径が存在する場合は、どのサイズを使うかを選んで使用することになるとされています。
ただし、
“現在は”対応していない
という記述があるため、これはソフトウェアの制限であり、将来的な対応が期待されます。
AMSが2台必要になる

最後に、「Vortekシステム」を最大限に活用するためには、AMSが2台必要になります。
そのため、右側のVortekで6つのホットエンドをフル活用し、さらに左側のノズルにもフィラメントを供給するためには、「AMS 2 Pro」2台と「AMS HT」がセットになった「Ultimate Set(究極セット)」も用意されています。

ただ、2026年にはフィラメントラックスイッチモジュールがリリースされる予定とのこと。
これを利用すれば2台のAMSのみで、左右すべてのホットエンドをカバーできるようになる見込みです。

なお、「H2D」「H2S」ユーザーは「Vortekアップグレードキット」を使って「H2C」へアップグレード可能ですが、これには4〜5時間の手間とスキルが必要となるようです。
「Vortekシステム」を実体験したいのであれば、「H2C」を直接購入することが推奨されています。
H2Cの気になるリリース時期と価格は?

まずは「H2C」の価格帯について、見ていきましょう。
ヨーロッパストアでの予約注文価格は、
となっており、1ユーロ180円として単純に日本円換算すると、
に相当します。
「H2D」の上位互換であることを考えれば想定内ではありますが、40万円を超える出費が必要となるでしょう。
販売形式については、Vortek搭載の都合上なのかAMSを含まない単体での販売はなく、最小の構成で「H2C AMS Combo Standard」となる模様。
気になるリリース時期に関しては、ヨーロッパでの発送が12月半ばとなるため、日本国内での展開は恒例通り1ヶ月程度の遅れをもって、年明けの2026年1月中には発売されるのではないかと推測されます。
続報が分かり次第、当メディアやX(旧Twitter)・Youtubeでも発信する予定なので、ぜひチェックしてください。
まとめ:Bambu Lab「H2C」がいよいよ登場!

「H2C」は、フィラメント切り替え時のpoop(ゴミ)問題を根底から解決する革新的なホットエンド交換システム「Vortek」を搭載した、これまでにない3Dプリンター。
「H2C」本体の発送はヨーロッパで2025年12月頃とされているため、
日本では2026年の頭にはリリースされるのでは?
と期待されています。
気になる価格は40万円を超える可能性が高く、なかなかスッと手の出る価格帯ではありませんが、それでも革新性に魅力を感じるユーザーにとっては導入する価値ある1台となるはず。
いまのうちに「H2S」や「H2D」といった共通点の多い機種のスペックをおさらいしたり、ツールチェンジャー方式を採用している「Prusa XL」について知識を深めたりしながら、リリースを待ちましょう!
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