こんにちは、管理人のウノケンです。
今回は、
話題の光造形3Dプリンター用フィルム「ACFフィルム」について解説
していきます。
これまで、フィルムには
が一般的に使用されていました。
そこに登場した「ACFフィルム」。何やら高速な3Dプリントを実現するために欠かせないフィルムとのこと。
「『ACFフィルム』ってどんなフィルム?」
「『FEP』や『PFA』と何が違うの?」
「『ACFフィルム』の販売状況は?」
という方のために、情報をまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
それでは見ていきましょう!
光造形3Dプリンターにおける「フィルム」の役割とは?
光造形3Dプリンターのレジンを注入するレジンバット(レジンタンク)の底部分に取り付けられている「フィルム」。
LCD(液晶ディスプレイ)等からレジンを硬化させるための紫外光を透過させつつ、未硬化レジンの保持・硬化レジンのスムーズな剥離を実現する重要な役割を担っています。
上記の役割を担うフィルムは、主に以下の性質をもつことが求められます。
このような特性をもつフィルムとして、現状、後述する3種類のフィルムが使用されています。それぞれどのような特徴をもつのか確認していきましょう。
ACF・PFA(nFEP)・FEPフィルムの特徴
光造形3Dプリンターに使用される主なフィルムは以下の3種類です。
それぞれのフィルムの特徴について確認していきましょう。
FEPフィルム(Fluorinated Ethylene Propylene Film)
FEPフィルムは、家庭用光造形3Dプリンターのフィルムとして最も一般的で、古くから使用されているフィルムです。
コモディティ化していることもあり、後述する2種のフィルムに比べて、価格はリーズナブルです。
PFA(nFEP)フィルム(Perfluoroalkoxy Film)
PFE(nFEP)フィルムは、家庭用としてはFEPフィルムよりも後発のフィルム。
FEPフィルムよりも剥離性が高く、寿命(使用できる回数)も長いとされています。(出典:Amazon)
名称としては、「nFEP(non-FEP)」や「FEP2.0」といった表記がなされることもあります。一般的なFEPフィルムに対して、異なる種類・次世代製品といった印象を与える表現ですね。
FEPフィルムに比べると、価格は若干上がります。例えば、同じ「ELEGOO『Saturn』『Saturn S』用の5枚入りフィルム」のAmazon価格は以下の通りです。
FEPフィルム | PFAフィルム | |
---|---|---|
価格 | 3,799円 | 4,299円 |
ACFフィルム(Advanced Composite Film)
ACFフィルムは、今回紹介する3つのフィルムのうち、最も後発の新しいフィルムです。
以下の画像は、ACFフィルムと上記の2フィルムの違いをわかりやすく示しています。
この画像は、プラットフォームと硬化済みのレジン(黄色)、剥離直後のフィルムの様子を示しています。ACF < nFEP(PFA)< FEPの順でフィルムのたわみが小さい様子が見て取れます。つまり、
ACF > nFEP(PFA)> FEPの順に剥離性が高い
ことを示しています。これにより、ACFフィルムは
を実現するフィルムとして注目が集まっているのです。
その高い性能と、現状の流通量の少なさから、価格はPFAよりもさらに高価です。例えば、以下のchitu systemsが扱うACFフィルムは、さきほど紹介したFEP、PFAの種の例と同等サイズ(290×210mm)のフィルム「1枚」で4,999円。FEPやPFAの約5倍の価格となっています。
高性能・長寿命とはいえ、頻繁には使用しづらい価格帯。今後一般的な製品となり、価格が落ち着いていくことに期待したいですね。
最新の3Dプリンターには、「ACFフィルム」が採用されている機種も登場しています。その1つである「Mars 4 Ultra」に関するレビュー記事では、「ACFフィルム」の使用感についても記載していますので、ぜひご覧ください。
光造形3Dプリンターにはどのフィルムを使うべき?
今回登場した3種のフィルム。一体どれを使用するべきなのでしょうか?状況に応じた選択のポイントについて解説していきます。
コスパ重視なら(FEPではなく)PFAフィルム
コスパを重視したい方は、もっとも安い「FEPフィルム」、ではなく「PFAフィルム」を選ぶと良いでしょう。
というのも、
ことから、「PFAフィルム」を選んだほうがランニングコストは低く抑えることができるのです。
「PFAフィルム」の寿命は「FEPフィルム」の1.5倍(出典:Amazon)とも言われており、計算上、「FEPフィルム」を3回使用する間に消費される「PFAフィルム」は2枚で済んでしまうのです。
ELEGOOのような光造形3Dプリンターブランドは、消耗品として販売するフィルムを「FEPフィルム」から「PFAフィルム」に切り替えていく傾向にあります。この現状において、あえて「FEPフィルム」を選ぶ理由はほとんどないでしょう。
プリント成功率・造形時間を重視するならACFフィルム
微細な造形や高速なプリントといった、より高度な3Dプリントを実現したい方は、「ACFフィルム」に挑戦してみるのも良いでしょう。
2023年に登場したCreality「HALOT-MAGE Pro」やAnycubic「Photon Mono M5s」といった家庭用光造形3Dプリンターは、高速プリントを特徴として打ち出す傾向にあります。造形時間の短縮は家庭用3Dプリンターのトレンドであり、今後ACFフィルムの使用が一般化されていくことも考えられます。
現状では市販されている品種が少ないですが、国内でもSK本舗から販売が開始されました(後述)。高速プリントという3Dプリントの新時代をいち早く体験したい方はぜひチェックしてみてください。
ACFフィルムを扱っているブランドは?
SK本舗:サイズ違いの3種類のACFフィルムを取り扱い中!
2023年8月より、SK本舗から「SKACFフィルム」が販売されています。
- 140×200mm(2枚入り)
- 対応機種の例:ELEGOO「Mars 4」「Mars 4 DLP」「Mars 4 Ultra」
- 220×310mm(2枚入り)
- 対応機種の例:ELEGOO「Saturn 3」「Saturn 3 Ultra」「Mars 4 Max」
- 290×450mm(2枚入り)
- 対応機種の例:Anycubic「Photon M3 Max」、ELEGOO「Jupiter」
上記のように、3種類のサイズから選択することが可能です。使用している3Dプリンターに応じて適切なものを選ぶようにしましょう。
ELEGOO:「Mars 4 Ultra」「Saturn 3 Ultra」対応フィルムを展開
ELEGOOの「Mars 4 Ultra」や「Saturn 3 Ultra」は、ACFを標準搭載する代表機種。
消耗品であるフィルムはAmazonで手軽に補充することができます。
Chitu Systems:サイズ次第では検討余地あり
有名な光造形用スライスソフト「ChituBox」で知られるChitu Systemsからも、ACFが販売されています。
SK本舗やELEGOOのフィルムではサイズが合わない場合などに活用すると良いでしょう。
まとめ:高速3Dプリンターだけではダメ!使うフィルムも重要!
今回は、話題の新しい光造形3Dプリンター用フィルム「ACFフィルム」を中心に、「FEPフィルム」や「PFAフィルム」の特徴と違いについて解説しました。
昨今のトレンドである高速3Dプリントの実現には、3Dプリンター本体はもちろんのこと、レジンやフィルムにもこだわる必要があります。現状、これらの「パーツ」は各社がリリースしはじめる段階にあり、今後ますますラインナップが増えていくことが期待されます。3Dプリンターを取扱う各社の動向から目が離せませんね!