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【フーリエ光学】フレネル回折とフラウンホーファー回折について解説

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今回はフーリエ光学の基礎である「フレネル回折とフラウンホーファー回折」について解説します。

「フレネル回折」や「フラウンホーファー回折」の考え方は、単色波スカラー回折理論の基礎に相当します。

レーザ光の伝搬をシミュレートする場合などには必須の考え方なので、「それぞれの理論がどのようなケースに適用できるのか」を抑えつつ、理解していきましょう。



フレネル回折とフラウンホーファー回折

前提

まずは、「フレネル回折」や「フラウンホーファー回折」を理解する上で抑えておくべき「前提」について述べていきます。

どんな光に適用できる?

「フレネル回折」や「フラウンホーファー回折」は単色波(波長が1つ)に関する回折理論です。よって、レーザのような線幅の狭い光を想定しています。

どんな状況をシミュレートしたい場合に有効?

比較的単純な光伝搬のシミュレートに有効です。光源が存在する「光源面」における光の場を定義し、ある「観測面」において伝搬によって生じた回折の結果を取得するという状況設定が一般的です。

また、スカラー回折を仮定しているという点もポイントです。つまり、各電場ベクトル、磁場ベクトルの振る舞いを独立に表現できる状況です。言い換えると、光が伝搬する誘電媒質が「線形」で「等方的」、「均質(透磁率が位置によらない)」、「非分散」、「非磁性」の場合です。

特殊な状況下のシミュレートには不向きですが、「レーザ光が矩形開口を通って空気中を伝搬し、ある距離進んだ後の光の場をシミュレートしたい」というような、ごく一般的なケースには適用できると考えてよいでしょう。

より厳密な回折計算にはRCWAやFDTDといった手法が用いられます

どのような近似が含まれる?

「フレネル回折」や「フラウンホーファー回折」が「スカラー回折を前提としている」ことは述べましたが、他にはどのような近似が含まれているのでしょうか?

その答えは、「どの回折式を用いるかによる」となります。

というのも、「フレネル回折」と「フラウンホーファー回折」では想定している状況が異なるのです。伝搬距離や光の波長などのパラメータに応じて適切な回折式を用いることが、精度の高いシミュレートを行う上で重要なポイントです。

「フレネル回折」や「フラウンホーファー回折」の表式、近似条件の解説に進む前に、より厳密な回折式である「レイリー-ゾンマーフェルトの回折の式」について見ていきましょう。



レイリー - ゾンマーフェルト(Reyleigh-Sommerfeld)の回折の式

光の伝搬方向である\(z\)軸に直行する2つの平行な2次元面における回折について考えます。

光源面\((\xi,\eta)\)の領域\(\Sigma\)に光源、あるいは開口が存在すると仮定します。その分布を\(U_1(\xi,\eta)\)とすると、観測面\((x,y)\)における光の分布\(U_2(x,y)\)は、レイリー-ゾンマーフェルト回折によって次のように記述されます。
$$ U_2(x,y)=\frac{z}{j\lambda}\iint_{\Sigma}U_1(\xi,\eta)\frac{\exp(jkr_{12})}{r^2_{12}}d\xi d\eta \tag{1}$$
ここで、\(z\)は2つの面の中心間距離、\(r_{12}\)は光源面のある位置から観測面のある位置までの距離です。つまり、
$$ r_{12}=\sqrt{z^2+(x-\xi)^2+(y-\eta)^2} \tag{2}$$
となります。

式(1)はホイヘンスの原理として知られています。つまり、光源の各点が点光源として振る舞い、球面波を生じた結果、観測面の各点においてコヒーレントに加算されるということを示しています。

「レイリー-ゾンマーフェルトの回折の式」は「フレネル回折」や「フラウンホーファー回折」よりも厳密です。スカラー回折の仮定以外に満たすべき条件は、光源から観測位置までの距離が波長よりも十分大きい(\(r>>\lambda\))ことのみとなっています。



フレネル回折の式

精度の高い回折表現である「レイリー-ゾンマーフェルトの回折の式」ですが、距離を表す項に平方根が含まれる点が計算コストを大きくしています。

そこで、近似によって実用的な回折の表現を与えるのが、「フレネル回折」です。

式(2)を平方根を二項展開し、1次の項までで近似します。

$$ r_{12}\approx z\left(1+\frac{1}{2}\left(\frac{x-\xi}{z}\right)^2+\frac{1}{2}\left(\frac{y-\eta}{z}\right)^2\right)\tag{3} $$

これを指数関数の位相項に適用し、\(r_{12}\approx z\)を分母に適用することでフレネル回折の表式を得ます。

$$ U_2(x,y)=\frac{e^{jkz}}{j\lambda z}\iint U_1(\xi,\eta)\exp\left(j\frac{k}{2z}\left((x-\xi)^2+(y-\eta)^2\right)\right)d\xi d\eta \tag{4} $$

また、\(f_{\xi}\rightarrow \frac{x}{\lambda z}, \ f_{\eta}\rightarrow \frac{y}{\lambda z}\)とすることで、フーリエ変換と同様の表記ができることがわかります。

$$ U_2(x,y)=\frac{e^{jkz}}{j\lambda z}\exp\left(j\frac{k}{2z}(x^2+y^2)\right)\iint \left(U_1(\xi,\eta)\exp\left(j\frac{k}{2z}(\xi^2+\eta^2)\right)\right)\exp\left(-j\frac{2\pi}{\lambda z}(x\xi+y\eta)\right)d\xi d\eta \tag{5} $$

最後に、近似の条件を考えてみましょう。式(3)で2次以上の項を無視することにより、最大1ラジアンの位相変化を許容するとすれば、

$$ z^3 >> \left(\frac{\pi}{4\lambda}((x-\xi)^2+(y-\eta)^2)^2\right)_{\mathrm{max}}\tag{6} $$

の条件が導かれます("max"は光源面と観測面の間で最大の値を意味します)。

式(5)を見てみると、フレネル回折の表式は「光源面の場\(U_1(\xi,\eta)\)にチャープ関数\( \exp\left(j\frac{k}{2z}(\xi^2+\eta^2)\right)\)がかかった関数をフーリエ変換している」ものであることがわかります。



フラウンホーファー回折の式

より限られた条件下では、「フラウンホーファー近似」を適用できます。フラウンホーファー近似の特徴は、「観測面の場が光源面の場のフーリエ変換(をスケールした形)で表せる」ことです。そのため、観測面の場をフーリエ変換のみでシミュレートできるというメリットがあります。

フラウンホーファー近似は、式(5)の積分内で「光源面の場」にかかっているチャープ関数が1であると仮定します。つまり、

$$ z>>\left(\frac{k(\xi^2+\eta^2)}{2}\right)_{\mathrm{max}}\tag{7} $$

が近似条件となります。

式(7)の近似により、式(5)は次のようにフーリエ変換の形で表すことができます。これがフラウンホーファー回折の式です。

$$ U_2(x_2,y_2)=\frac{e^{jkz}}{j\lambda z}\exp\left(j\frac{k}{2z}(x^2+y^2)\right)\iint U_1(\xi,\eta)\exp\left(-j\frac{2\pi}{\lambda z}(x\xi+y\eta)\right)d\xi d\eta \tag{8} $$

参考書籍

[1] 谷田貝豊彦「光とフーリエ変換

[2] David Voelz「Computational Fourier Optics: A MATLAB Tutorial

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3. フーリエ変換とコンボリューション
4. 線形システム
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6. フーリエ光学
7. 光コンピューティングと画像処理
8. 解析信号とヒルベルト変換
9. 干渉と分光