こんにちは、管理人のウノケンです。
今回は、光造形3Dプリンターで使用するレジンの種類と選び方について解説していきます。
光造形3Dプリンターの材料となる「レジン」。どんな色・材質のモノが仕上がるかは材料のレジン次第です。そんなレジンですが、
「Amazonで安く購入できるレジンしか使ったことがない。。。」
「いつもなんとなく同じレジンを選んでしまっている。。。」
という人も多いのではないでしょうか?
世の中には多くのレジンが出回っています。有名どころを数え上げるだけでも、その数ざっと50種類以上。正直、
「どのレジンを選べば良いのかわからない!」
という方がほとんどでしょう。そこで今回は、
という方の参考になるように、レジンの種類と選び方について徹底解説していきます。
作りたいモノに合わせて適切なレジンを使いこなすことができれば、あなたの3Dプリンターモノづくりの幅はグンと広がること間違いなしです。最後までぜひご覧ください。
それでは見ていきましょう!
YouTubeでは実際にレジンを使ってみたレビュー動画も投稿しています!
レジン選びの参考になるレビュー動画を投稿しています。チャンネル登録の上、実際の使用感をチェックしてみてください!
3Dプリンター用レジンとは?
そもそも3Dプリンター用のレジンとは何か?ということに触れておきましょう。
「レジン(樹脂)」とは、簡単に言うと光を当てると固まる液体
のことです。光造形3Dプリンターで使用されるのは、樹脂の中でも紫外線硬化樹脂(UVレジン)と呼ばれるタイプです。その名の通り、どんな光でも固まるわけではなく、紫外線を当てることで固まるという特徴があります。
市販されている光造形3Dプリンターは、基本的に波長405nmの紫外光を使用しています。市販のレジンも基本的に405nmで固まる仕様になっています。そのため、
です。3Dプリンターのブランドは気にせずに、自分の用途に合わせたレジンを選択しましょう。
市販されている「レジン」には、3Dプリンター用途以外のレジンも存在しています。
ため注意しましょう。以下のように、「(光造形)3Dプリンター用レジン」などと記載があるものを選べばOKです。
こんなにたくさん!3Dプリンター用レジンの種類一覧
3Dプリンター用レジンにはいろいろな種類があります。色や硬さが異なるだけでなく、温度によって色が変わるレジンのような変わり種も存在します。
一例として、多数のレジンを扱うSK本舗のレジン一覧を見てみましょう。
レジン名 | SK水洗いレジン | ABS-Likeレジン | 高靭性レジン | 高靭性水洗いレジン | タフレジン | 高透明度レジン | ゴムライクレジン | フレキシブルレジン | 高弾性ラバーレジン | キャスタブルレジン |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
イメージ | ||||||||||
メーカー | SK | SK | SK | SK | SK | SK | SK | SK | SK | SK |
色 | ■White ■Black ■Grey ■Star Gray ■Skin ■Clear Blue ■Clear Red ■Clear Green □Clear | ■White ■Black ■Grey ■Skin □Clear | ■White ■Grey ■Blue | ■White ■Grey ■Black □Clear ■Light Beige ■Clear Sky Blue ■Clear Raspberry Pink ■Clear Lime Green | ■White ■Black ■Grey □Clear | □Clear | □Clear | ■White ■Black ■Grey □Clear | ■Dark Gray | ■Yellow |
容量[g] | 500 1000 | 500 1000 | 500 1000 | 500 1000 ※一部のみ | 500 1000 | 500 | 500 | 500 | 500 | 500 |
出典 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
1つのブランドに限っても、非常に多くのレジンが存在していることがわかりますね。
レジン名だけ見てもどのような性質を持つレジンなのかわかりにくいかと思います。ここからはSK本舗の例に限らず、主なレジンの種類について簡単に解説していきます。
初心者の方で、まずはおすすめのレジンの種類を知りたい方は「初心者におすすめのレジンの種類は?」の項目にジャンプしてください。
スタンダードレジン
「スタンダードレジン」は、その名の通り
を指します。「UVレジン」のような他の特徴のないレジンもこれに該当します。
基本的に最も価格が安く、材質的にも目立った特徴はありません。さまざまなレジンの中で、最も使用している人が多いレジンなのではないでしょうか。
プリント後にはIPAのようなアルコールを使って洗浄を行います。
水洗いレジン
「水洗いレジン」は、
です。アルコールを使用する必要がないという点で非常に人気が高く、初心者にもおすすめのレジンです。アルコールの刺激臭が苦手という方や、家庭で引火性のあるアルコールを保有することに不安のある方にとっては非常にうれしい存在ですね。
難点は、以降のレジンのような目立った材質的特徴がない点と、
点でしょう。
高速レジン(ファストレジン・ラピッドレジン・スピードレジン)
高速プリント対応レジンは、
です。2023年以降、続々登場している
といった高速プリントが可能な光造形3Dプリンターの登場にあわせて、各社から次々にリリースされているレジンです。
という性質を備えています。
高透明度レジン(クリアレジン)
「高透明度レジン」は、
です。
スタンダードレジンや水洗いレジンにも「Clear」や「Transparent」といった「透明色」は存在していますが、「若干黄色味がかった透明」なのが一般的です。「透き通ったフィギュアを作りたい!」と思って「スタンダードレジンの透明色」レジンを購入したものの出来上がりにガッカリしたという経験のある方は少なくないでしょう。
一方、「高透明度レジン」は違います。各社が自信をもって「高透明度」を謳うだけあって、しっかり透明な造形物を手に入れることが可能です。「スタンダードレジンの透明色」にガッカリした経験のある方や、アクセサリーのような透明度を重視するような造形用途には特におすすめしたいレジンです。
※ブランドによって、スタンダードレジンの黄色味や高透明度レジンの透明度には違いがあります。後処理の質にも左右される点に注意しましょう。
高解像度レジン(4K、8K、10Kレジン)
「高解像度レジン」は、
です。プリント精度が高く、低収縮という特徴があります。
最近では、SK本舗から「10K」の高解像度レジンが登場したことも話題になりました。
ディテールの表現にこだわるフィギュア用途に適したレジンを探している人は、一度試してみると良いでしょう。
植物ベースレジン
「植物ベースレジン」は、主に大豆油を使用したエコフレンドリーなレジンです。
があります。
化学物質の使用に抵抗のある方や、子どものいる環境で使用する場合などにおすすめです。
ABSライクレジン
スタンダードレジンの脆さや曲げ耐性に不満のある方におすすめしたいのが、「ABSライクレジン」です。
ABSとは、アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)からなる合成樹脂で、
です。
フィギュア用途というよりも、曲げや衝撃の加わる用途の造形時に採用したいレジンです。
また、水洗いタイプのABSライクレジンも登場しています。以下のレビュー動画を参考にしてみてください。
高靱性レジン(タフレジン)
「高靱性レジン」は、
です。
靭性という言葉は聞き慣れないという方も多いでしょう。Wikipediaには次のように記載されています。
靱性(じんせい、英語: toughness)とは、物質の脆性破壊に対する抵抗の程度、あるいはき裂による強度低下に対する抵抗の程度のことで、端的には破壊に対する感受性や抵抗を意味する。
Wikipedia「靭性」より
簡単に言うと、「ポキっと折れにくい」というイメージです。単に壊れにくいというよりも、過度な力が加わったときにじわっと変形し粘り強く抵抗する性質を意味しています。
強度がありながら柔軟性も併せ持つような材質を求めている方におすすめのレジンです。
高弾性レジン(ゴムライクレジン、フレキシブルレジン)
「高弾性レジン」は、
です。硬化させた後の材質は、その名の通り弾性が高く、ゴムのような感触です。タイヤやバネのようなモノを3Dプリントしたい場合に適するレジンと言えるでしょう。
「フレキシブルレジン」や「ゴムライクレジン」も類似の性質をもっています。弾性の度合いはレジンによって違いがあるので、各社の製品説明やレビューを参考にすると良いでしょう。
耐熱性レジン
「耐熱性レジン」は、
です。
一例として、Phrozenの高耐熱性レジン(TR300)と、他のレジンの熱変形温度を比較してみましょう。
4Kレジン | ABSライクレジン | 高耐熱性レジン(TR300) | |
熱変形温度(HDT)[℃] | 70 | 46 | 190 |
4KレジンやABSライクレジンと比べて、100℃以上も高い温度まで熱変形に耐えることが可能です。
歯科用の熱成形やモックアップの作製、3Dプリントジュエリーのような高温用途に適したレジンを探している方は検討してみましょう。
サーモクロミックレジン
熱に関するユニークなレジンに「サーモクロミックレジン」があります。
このレジンは、
という特徴があります。上記の「ELEGOO サーモクロミックレジン」の例では、50℃以下では灰色、50℃以上では紫色になるという不思議なレジンです。
使い道はフィギュア等の用途でしょうか。変わり種のレジンに興味がある方には1度試してみてほしいユニークなレジンです。
歯科用レジン
3Dプリンターの活用は歯科業界でも進んでいます。3Dスキャンしたデータをもとに、一人ひとり形の違う口内の形状に合わせた義歯や歯列矯正器具を3Dプリントすることが可能です。
専門家向けにはなりますが、歯科用3Dプリンティング専用のレジンも多数開発されています。
キャスタブルレジン
「キャスタブルレジン」は、
です。ロストワックス鋳造に使用される蝋(ワックス)を含んだ特殊なレジンで短時間で灰を残さずに燃え尽きる特徴があります。(出典:i-maker「キャスタブル・ワックスレジン」)
宝飾品の原型として使用されるなど、ジュエリー3Dプリンティングの領域で注目される上級者向けのレジンと言えるでしょう。
実際にどのように使われるかを説明するには少々工程が複雑です。興味のある方はSK本舗のコラム「3Dプリンターを使用したジュエリー製作」を読んでみてください。
どのブランドのレジンを選べば良い?
ここまで数多くのレジンについて解説してきました。知らなかったレジン・使ったことのないレジンがたくさんあったのではないでしょうか?
同じような種類のレジンであっても、多数のブランドがレジンを展開しています。そんな中、どのブランドを選べばよいのでしょうか?
装置メーカーに合わせる必要はない
レジンを選ぶにあたって、
です。どのブランドの光造形3Dプリンターも通常は波長405nmの光を使っているため、他ブランドのレジンを使っても問題なく硬化させることができます。
同じ種類・色でもブランドによって質感や匂いが異なる
レジンの物性値(粘性や硬度など)は、種類だけでなくブランドによっても異なります。
そのため、同じ種類でかつ同じ色であっても、ブランドによって適切な3Dプリンターの設定パラメータは異なり、仕上がった3Dプリント品の手触りや強度も異なります。
例えば、同じ「ホワイトの水洗いレジン」であっても、ELEGOOとNOVA3Dが出しているレジンでは質感や匂いがまったく異なります。筆者の感覚値では、前者の方がマットな感じで匂いはマイルド、後者はツルツルな仕上がりで少し刺激のある匂いです。
レビューを参考にしつつ、少量買って試してみる
作りたいモノの種類や、個人の好みに応じて最適なレジンは変わってきます。レジン選びにあたっては、やはり
「自分で使ってみる」のが一番
かと思います。
まれに250gで販売されているケースもありますが、基本的には500gが最小量です。この程度であればすぐに使い終わるので、レビューを参考にしつつ、気になるレジンを実際に使ってみることをおすすめします。
少々上級者向けですが、次の項目で紹介する「レジンの物性値」もレジン選びの参考になります。好みのレジンを探し当てるためにざっくり把握しておくと良いでしょう。
レジン選びの参考になるスペック(物性値)
レジンを選ぶにあたって参考になるのが、レジンのスペック(物性値)です。物性値にはレジンの粘性や硬度をはじめとするさまざまなものがあります。主要な値について簡単に解説していきます。
硬度(ショア硬さ、Hardness)
硬度は、
です。3Dプリンター用レジンの硬度は、ゴム硬度に使われる「ショア硬さ」という値で表記されていることが多いです。
硬度の値が大きいほど硬い造形物を得ることができます。
収縮率(Shrinkage)
収縮率は、
です。レジンの種類・ブランドによりますが、1桁%台の収縮率が一般的です。
高精度の光造形を行いたい場合は、収縮率の小さいレジンを選ぶか、あらかじめ収縮率を考慮した設計を行う必要があります。
粘度(粘性係数、Viscosity)
粘度は、
です。この値が大きいほど、レジンはドロっとしています。
「高弾性レジン」や「高靱性レジン」のような、弾力・靭やかさのあるレジンは粘度が高い傾向にあります。
熱変形温度(荷重たわみ温度、Heat Deflection Temperature、HDT)
熱変形温度は、
です。熱変形温度程度まで温度が上昇すると変形が起きるため、この値が大きいほど耐熱性が高いということになります。
ここで紹介したもの以外にもさまざまなパラメータがあります。興味のある方はぜひ調べてみてください。
初心者におすすめのレジンの種類は?
ここまで、数多くのレジンの種類や注目すべきスペック(物性値)について解説してきました。初心者の方にとっては難しい内容も多く、
「結局どのレジンを選べば良いの!」
と思っている方もいるかもしれません。
最後に、初心者の方におすすめのレジンと、ステップアップのしかたについて解説していきたいと思います。
まずは水洗いレジンを使ってみよう
初心者の方が最初に選ぶレジンとしておすすめしたいのは、「水洗いレジン」
です。
3Dプリンターでプリントしたあとの処理として、「洗浄」の工程があります。表面に残っている硬化していない不要なレジンを洗い流す作業です。洗い流すといっても、
です。初心者の方の中には、引火性や刺激臭があり保管にも気を遣うアルコールをいきなり用意することに抵抗がある方もいるでしょう。
です。洗浄に使うのは水道水だけです。家庭にある中性洗剤をあわせて使うことを勧めているブランドもありますが、こちらもごく一般的な洗剤で大丈夫です。初心者の方にとってはグンとハードルが低くなる選択肢です。
「スタンダードレジン」と比べると若干高価な点はネックです。とはいえ、アルコール不要で管理コストが下がることを考えれば、初心者の方が最初に手に取るべきは「水洗いレジン」と言って差し支えないでしょう。
3Dプリンターに慣れたらスタンダードレジンに手を出してみよう
「水洗いレジン」を使って3Dプリンターデビューを果たしたら、
ことをおすすめします。「水洗いレジン」よりもカラーラインナップが充実している場合が多く、造形の幅が広がります。
「スタンダードレジン」の使用にステップアップする際は、「レジンウォッシング」の使用を検討してみましょう。IPAと比較して次のようなメリットがあり、初心者の方のステップアップに最適な洗浄液となっています。
スタンダードレジンが物足りなくなってきたら他のレジンにも挑戦
「スタンダードレジン」とその洗浄液の扱いに慣れてきたら、十分他のレジンも扱えるようになっているはずです。
「スタンダードレジン」に比べると露光時間等の設定にクセがある場合も少なくありませんが、試行錯誤しながら最適なパラメータを見つけ出しましょう。興味のあるレジンについては、ブランドの公式ページやSNS、ブログ等でノウハウが公開されている場合もあるのでチェックしてみることをおすすめします。
「こんなにたくさん!3Dプリンター用レジンの種類一覧」の項目で紹介したように、さまざまな用途に対応したレジンが続々と開発されています。いろいろなレジンに手を出して、光造形3Dプリンターと多様なレジンの世界を楽しんでいきましょう。
まとめ 〜適切なレジンを選んでプリントの幅を広げよう〜
今回は、光造形3Dプリンターで使用するレジンの種類と選び方について解説してきました。
これまで知らなかったレジンの種類や販売しているブランドについて理解できたのではないでしょうか?
今までとは異なる種類のレジンを使ってみると、まったく違う色や材質の3Dプリントを体験することができます。3Dプリントの幅を広げるべく、新しいレジンの導入にチャレンジしてみてください。
レジン選びに必要な各レジンの色や詳細なスペック(物性値)を調べるには…
レジン選びに必要な各レジンの色や詳細なスペック(物性値)を調べるには、
「無料のレジン比較ツール」が便利
です。各ブランドの公式ページを徘徊する手間を省くべく作成しましたので、ぜひ一度使ってみてくださいね!
各ブランドが展開するレジンについてより詳しく知りたい方は…
各ブランドが展開するレジンについてより詳しく知りたい方は、個別に解説した以下のページもあわせてご参照ください。