こんにちは、管理人のウノケンです。
今回は、3Dプリンターを使ってクッキー型を販売・購入する際の注意点と、考えうる安全対策について解説していきます。
個人が販売できるECサイト等において、人気のクッキー型。3Dプリンターで作られた商品も多く、大量生産ではない個性的な作品の数々が人気を博しています。
そんな3Dプリンター製のクッキー型とは切っても切れないのが、
食品に使用する3Dプリンター製のクッキー型は安全なのか?
という問題です。
実際、個人が製作したクッキー型が多数販売されているメルカリから、「3Dプリンターで自作した商品の危険性」を注意喚起する案内も出されています。
この記事では、
について徹底解説していきます。
3Dプリンター製クッキー型の販売・購入を考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
それでは見ていきましょう!
記事の内容を動画でチェックしたい方はこちら!
この記事の内容はYouTubeでも動画で解説しています。記事とあわせて活用してみてください。
個人が販売する3Dプリンター製クッキー型の現状【2024】
まずは、3Dプリンター製クッキー型を取り巻く現状について把握していきましょう。
ハンドメイド系のECサイトで人気の3Dプリンター製クッキー型
副業ブームの後押しもあり、多くの3Dプリンターユーザーが販売するクッキー型。ハンドメイド系の出品が多い各種ECサイトにおいて、どれくらいの3Dプリンター製クッキー型が販売されているのでしょうか?
購入者の立場からすると、とても選びきれないほどの膨大な数の3Dプリンター製クッキー型が販売されていることがわかりますね。検索結果のページを眺めているだけでも楽しい、個性豊かな作品が並んでいます。
製作者(販売者)視点では、
などといったメリットがあり、
「3Dプリンターを使って何か副業をはじめたい!」
という方に選ばれやすい製作対象なのではないかと思います。
食品衛生法違反のリスクとECサイトにおける注意喚起
消費者・3Dプリンターユーザーの双方から人気の3Dプリンター製クッキー型。
一方で、
「3Dプリンター製のクッキー型は安全なのか?」
という問いは常に投げかけられています。
「食品衛生法に違反しているのでは?」
という厳しい指摘がなされることも少なくありません。
冒頭でも触れたように、つい先日メルカリからも3Dプリンター製商品の安全性に関する注意喚起が行われており、クッキー型等に関しては以下のように言及されています。
3Dプリンターは製造時にできる積層痕で細菌が繁殖する、金属摩耗でノズル片が混入する等のリスクがあります。また、耐熱性が低く、煮沸消毒ができないため、衛生面に問題があります。
例えば3Dプリンターで自作したクッキー型やケーキ型のような食品器具に該当する商品を購入し、実際に購入品を使用して調理した場合、細菌や金属片が食べ物に混入し、経口摂取することで健康被害が発生するおそれがあります。
引用元:メルカリびより「3Dプリンターで製造したハンドメイド商品について」
メルカリの注意喚起にも触れつつ、次の項目では、「3Dプリンター製クッキー型の何が問題なのか」を具体的かつわかりやすく解説していきます。
3Dプリンター製クッキー型の何が問題なのか?
3Dプリンター製クッキー型の安全性に関する懸念について、
- 3Dプリンター本体
- 材料(フィラメント・レジン)
- 3Dプリントされた型そのもの
のそれぞれについて、特に憂慮すべき点について解説していきます。
3Dプリンター本体:ノズルやプラットフォームが汚染されている危険性
まずは3Dプリンター自体に関連する問題点として、「ノズルやプラットフォームが汚染されている危険性」が挙げられます。
仮に後述する「安全な材料」を使用したとしても、ノズル(3Dプリンター本体の一部。材料が出てくるところ)が衛生的に安全とは限りません。過去に使用した「安全性が担保されていない材料」の残留物や、メルカリが言及したようなノズル片が混入する危険性は排除できません。
また、プラットフォーム(3Dプリンター本体の一部。材料が積み重ねられていく土台)の衛生面も無視できません。プラットフォームには、ノズル同様に過去にプリントした材料の残留物や、定着性を高めるためのノリやヘアスプレーから噴霧された内容物が付着している場合が少なくありません。
材料(フィラメント・レジン):PLAは植物由来なので安心…?
続いて、材料に関する問題です。3Dプリンター製のクッキー型の商品説明では、次のような記述が頻繁に見受けられます。
PLAという植物(トウモロコシ)由来の材料を使用しています。
消費者からすれば、「何となく安全そう」な印象を受ける記述ですよね。
しかしながら、材料にPLA(ポリ乳酸)を使っていれば必ずしも安全とは限りません。ほとんどのフィラメントは食品衛生法に適合しているとは限らず、食品安全なフィラメントはほんのひと握りです。このような材料は数少ないだけに、食品安全の旨を大々的に周知しているものが多いです。
3Dプリントされた型:煮沸消毒不可。積層痕は雑菌の温床
さらに、3Dプリントされた型自体に内在する「繰り返し使用する中で、型を清潔に保つことができない」という課題も無視できません。特に重要なのは次の2点です。
3Dプリンター製クッキー型によく用いられるPLAという材料の軟化温度は、約60℃程度と、比較的低温です。
筆者も以前、試しにPLAでプリントしたモノに熱湯(約100℃)を注いでみたことがあります。「溶ける」とまではいかないものの、構造が柔らかくなり、たちまち歪んでしまいました。使用するたびに熱湯による煮沸消毒を行うことはとてもできないでしょう。
また、3Dプリンターを使った製法に特有の積層痕(表面に生じる微細な溝)の存在も悪さをします。3Dプリンターを使って製作している以上、使用した後にクッキーの材料が残りやすく、メルカリの注意喚起文にも見られるように細菌も繁殖しやすい表面になることは避けられません。後述するように、表面をコーティングするような対策は不可欠でしょう。
安全な3Dプリンター製クッキー型を販売するための対策2選
ここまで解説してきた注意点を踏まえ、安全な3Dプリンター製クッキー型を販売するための対策を2つ紹介していきます。あくまでも1つの提案として、ご自身の製作方針や購入時の選定基準としてご活用ください。
食品衛生法適合材料を、クッキー型専用の3Dプリンターとともに使用
1つ目は、「クッキー型専用機とした3Dプリンターと食品衛生法に適合した材料を使って製作する」というものです。
積極的に推奨できるものではない、ある意味「妥協案」です。どうしても3Dプリンターでクッキー型を作成したい個人のための、(十分ではないが)最低限守るべきラインと言っても良いでしょう。具体的には、以下の安全に関する対策を行います。
とはいえ、上記のような対策を行っても、ノズル片が混入する可能性は残りますし、PLAを使用すれば煮沸消毒ができないことに代わりありません。
また、業として行う場合は、食品衛生法に準拠すべく必要な検査や届け出を行うことも必要になるでしょう。
食品衛生法に適合した3Dプリント品を製作できる外注業者を利用する
もう1つの対策は、デザインのみを自分で行い、出力自体は業者に任せるというものです。
例えば、DMM.makeのサービスを使えば、食品衛生法に適合した出力物を得ることができます。
といった、個人製作者の場合におろそかにされがちな安全性への配慮がなされています。
もちろん、高い安全性という品質を求める以上、コストは高いです。上記のDMM.makeのページによれば、見積価格は4,000円前後となるようです。ハンドメイドショップの相場(1,000円以下)と比べると、現状では大幅に原価割れすることになるでしょう。
まとめ:3Dプリンター製クッキー型の販売者・購入者が注意すべきこと
今回は、3Dプリンターを使ってクッキー型を販売する際の注意点と、考えうる安全対策について解説してきました。最後に、販売者と消費者のそれぞれの視点で、3Dプリンター製クッキー型を販売・購入する際の注意点についてまとめます。
販売者(3Dプリンターユーザー)が注意すべきこと
食品安全に最大限配慮した製作を行う
「植物由来のPLAを使用」すれば安全という認識は誤りです。食品安全な材料を使用し、他の材料が混入する余地を可能な限り排除することが不可欠です。積層痕に残る雑菌を減らすための表面コーティングも必ず行いましょう。
食品衛生法に則った検査・表記を行う
業として販売を行う場合には、届け出や表記が必要になる場合があります。必要に応じて専門家の指示を受け、適切に対応するようにしましょう。
食品安全に関する適切な表記を行うことは、安全性の低い商品・「植物由来のPLAを使用」しているだけの商品を淘汰し、安全なクッキー型が消費者に届きやすい環境づくりにも役立つことでしょう。
消費者(クッキー型購入者)が注意すべきこと
食品衛生法に適合した商品であることを確認する
商品の説明欄に、食品衛生法に適合した商品である旨が記載されているか、必ず確認しましょう。きちんと対応しているショップであれば、必ず記載されているはずです。「植物由来のPLAを使用」していれば安全というわけではないことに注意してください。
販売者・消費者の双方が、食品安全への意識を忘れずに3Dプリンター製クッキー型を楽しめる環境づくりを行っていきましょう。