こんにちは、管理人のウノケンです。
今回は、光造形3Dプリンターで使用する材料である「レジン」の匂い対策について解説していきます。
数十マイクロメートルの精度で精密にフィギュアなどを作成できる光造形3Dプリンター。個人でも数万円程度で手軽に購入できる優れた装置です。
一方で、どうしても気になるのがレジンのイヤな匂い。この匂い、なんとかして対策できないものでしょうか?
今回は、レジンの匂い対策として有効な手段を5つ紹介していきます。また、
についてもあわせて紹介していきます。
「レジンってクサいだけでしょ?」という誤った理解をしている方は、この記事を読むことで適切な対応が取れるようになるはずです。
それでは見ていきましょう!
光造形3Dプリンター使用時にレジンの匂い対策が必要な理由

まずは、そもそもレジンの匂い対策が必要な理由について解説していきます。
「レジンは臭いけど、我慢できないほどじゃないよ?」と思っている方は要注意。
レジンには特有の匂いがある
すでに光造形3Dプリンターを使ったことがある肩はご存知のように、使用される材料のレジンは特有の匂いを持ちます。レジンの表面から揮発する成分や、紫外線硬化の過程で生じる匂いに悩まされているという方は少なくないでしょう。
レジンの種類にもよりますが、この匂いは非常に不快感が強いです。レジン臭の充満した部屋で長時間作業していると、頭痛やめまいを引き起こすこともあります。
発がん性物質が含まれる場合もある
さらに重要なのは、一部のレジンが発がん性物質を含む場合があるということです。揮発性有機化合物(VOC)と呼ばれるレジンに含まれる化学物質の一部は、健康を害する可能性があると指摘されており、事業者に対しては当局による規制も行われています。
頭痛やめまい、吐き気、また長期的には発がんのリスクをもたらすレジン。3Dプリンターを安全に使用するためには、このレジンの匂いやVOCへの適切な対応が欠かせません。
「やってはいけない」レジンの匂い対策

レジンの匂いを放置することは危険だということがわかったのではないでしょうか?これを踏まえて、「やってはいけない」レジンの匂い対策について確認していきます。
どれも「うっかりやってしまっている」人が多い不適切な対応です。自分はやってしまっていないか、チェックしておきましょう。
窓を締め切った部屋で無対策のまま使用
一番やってはいけないレジンの使い方は、「無対策」です。特に窓を締め切って使用するのは絶対にやめましょう。
レジンから発生する匂いや揮発性有機化合物(VOC)は、閉じた空間で濃縮されると、健康への影響が増大します。暑い夏や寒い冬のような換気が困難な場合でも、後述するような対策を講じる必要があります。
芳香剤で匂いをごまかす
芳香剤などを使って他の匂いを「付け足す」ことは対策になりません。
不快感が軽減したとしても、健康に悪影響を及ぼす成分が減るわけではありません。必要な対策は、VOCなどを「取り除く」ことができる対策です。
光造形3Dプリンターの排気口をふさぐ
初心者がやってしまいがちなのが、3Dプリンター本体の排気口をふさいでしまうことです。
排気口は、内部で発生する熱や化学物質を外部に排出するための重要な機能です。排気口をふさいでしまうと、3Dプリンター内部に熱がこもり、機器の故障につながる可能性があります。PC等に排熱用のファンがついているように、3Dプリンターを稼働させることで生じる熱も排出する必要があるのです。
また、化学物質が溜まると、プリントが終わってUVカバーを開けたときに一度に放出されます。ユーザーが化学物質をまとめて吸い込んでしまいやすくなり、非常に危険です。
これらの「やってはいけない」対策には心当たりがある人も多いのではないでしょうか?そんな方は、次の項目で紹介する適切なレジンの匂い対策を実践し、安全で快適な3Dプリント環境にすることをおすすめします。
光造形3Dプリンターのレジン臭対策5選
ここからは具体的なレジンの匂い対策について5つ紹介していきます。それぞれメリット・デメリットがあるので、1つを選ぶというよりも、複数の対策を並行して実施すると良いでしょう。
そもそも匂いの少ないレジンを使う
最初の対策は、できるだけ匂いが少ないレジンを選ぶことです。ブランドや種類によってレジン匂いは異なります。また、市場には低臭型のレジンも存在します。ただ、匂いの強さは人によっても異なるので、レビュー等も参考にしつつ、いくつかのレジンを試してみる必要があるでしょう。
とはいえ、無臭のレジンはありません。基本的には他の対策と併用することが必須の対策です。
- 作業時の不快感が減る
- 「無臭」のレジンはない
- いくつかのレジンの匂いを確かめる必要がある
- 使いたいレジンの匂いが強い場合は他の対策が必要
換気・排気
2つ目の対策は、適切な換気や排気を行うことです。3Dプリンターを使用する部屋を頻繁に換気することで、レジンの匂いを外に排出します。
基本的には「換気・排気」は必須の対策です。他の対策を講じた場合にも、部屋の窓は常時開放しておくべきでしょう。2つ以上の窓を空けて空気が流れる状態になっているのがベストです。
ただし、真夏や真冬、悪天候の日などは窓を開けるのが困難な場合もあります。そのような場合は、換気扇を回して少しでも換気が進むようにしましょう。後述する空気清浄機の使用も検討してください。
また、排気用のダクトを取り付けるという手段もあります。本体の排気口をふさぐような形でダクトの取り付け部品を設置し、ダクトの排出口を換気扇や室外、カーボンフィルターなどに放出することで、室内へのレジン臭放散を抑えることが可能です。
「ダクトの取付部品を3Dプリンターで作ってしまおう!」という試みもあります。Thingiverse等の共有サイトにいくつかデータがあるので、探してみても良いかも知れません。

- 換気は手軽に実施できる(必須!)
- 真冬や真夏、悪天候日は換気が難しい
- ダクト取り付けは手間がかかる
一般の室内用空気清浄機
一般の室内用空気清浄機も、レジンの匂い対策として有効です。
空気清浄機は、微細な粒子を捕捉し、空気中の匂いを取り除きます。ただし、全ての空気清浄機がレジンの匂いやVOCを完全に除去できるわけではないので、購入前には製品の仕様をよく確認してください。
ちなみに筆者の作業場では、以下の空気清浄機を使用しています。レジンや洗浄用アルコール使用時に匂いが充満すると、センサーが検知してLEDインジケータが赤く光ります。同時に、自動で空気清浄の出力を上げてくれるので、窓の開けにくい空調使用時や雨天時に重宝しています。
- 空調使用時、悪天候時に使用できる
- 匂いの充満を検知してくれる
- レジンの匂いやVOCを完全に除去できるわけではない
- 窓を開放していると効果が薄れる
3Dプリンター用ミニ空気清浄機
近年では、3Dプリンター専用のミニ空気清浄機も出てきています。これらは、3Dプリンターのレジンバット近くに設置し、プリント中に発生する匂いを直接吸引します。
- 一般の空気清浄機・・・3Dプリンター外側の「室内の空気」を清浄化
- 3Dプリンター用ミニ空気清浄機・・・3Dプリンターの「UVカバー内(チャンバー内)の空気」を清浄化
室内にレジン臭が充満する前に清浄化できるところがポイントです。
充電が手間ではありますが、1度充電すれば24時間以上の連続稼働が可能です。
3Dプリンター本体にあらかじめUSBタイプの空気清浄機が搭載されている機種も少なくありません。このタイプでは、本体と電源が共通になっているタイプが多いです。毎回充電する手間が生じないのは、USBタイプのうれしいポイントですね。

注意すべきは、空気清浄機内に搭載されている活性炭の使用期限です。活性炭のサイズや3Dプリンターの使用頻度にもよりますが、通常3〜6ヶ月で交換が必要になります。
「使い始めて1年が経つけど、一度も交換していない…」
そんな方は要注意。ほとんど効果がない空気清浄機を空運転させている人は少なくないはずです。定期的に内部の活性炭にを取り替えるようにしましょう。
交換する活性炭は、純正品が好ましいですが、日本ではやや入手性が悪いです。以下のような互換性のある活性炭を使うことになるでしょう。
また、市販の粒状活性炭を再利用できるトレーに入れて、内部の活性炭と置き換えることも可能です。例えばELEGOOミニ空気清浄機であれば、Thingiverseのデータを活用することができます(筆者も使わせてもらっています)。

- 室内に充満するレジン臭を抑えられる
- (種類によるが)充電・給電の手間がない